ひびきジャーナル 第5号

玉木宏樹 金子健治 黒木朋興 峰咲マーユ 田村圭子 福田六花(2001年12月7日発行)

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ピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会会報
『ひびきジャーナル』  【創刊第5号】
2001年12月7日発行

編集/発行:ピュア・ミュージックサロン/純正律音楽研究会
      〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2 (有)アルキ内
      Tel. / Fax. 03-3407-3726
※本誌ネット版は『ひびきジャーナル〈正会員版〉』を基に別途編集してネット会員の方に配信しております。
※(C)純正律音楽研究会  禁無断転載
 転載等、二次的にご使用になる場合は、必ず事前に純正律音楽研究会事務局まで御一報ください。
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<<今号の内容>>
■1■玉木宏樹の“この人と響きあう” 第5回
                     リコーダー奏者 金子健治さん
■2■ムッシュ黒木の純正律講座 第5時限目
   「純正律」が届くまで     黒木朋興
■3■天国的純正律音楽入門 第5回    続・ビブラートの正体について
       純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
■4■癒しの現場から――陽幸堂 峰咲マーユさんにきく(3)
   もう一度子どもになってみよう!             田村圭子
■5■外科医のうたた寝☆その4 医者の不養生(1)
          福田六花(純正律音楽研究会発起人:医学博士、作曲家) 
■6■CD REVIEW [[[[[[[[[純正茶寮]]]]]]]]]]  黒木朋興×玉木宏樹
   Trio Patrekatt『Adam』(xource/xoucd 119)
■7■Letter Rack~会員の皆様からの投稿コーナー~
■8■純正律かわらばん→玉木新著『純正律は世界を救う』12月20日発売に!
■9■西麻布通信

レアな純正律情報満載のピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会の公式ホームページが、いよいよ近日オープンします!
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■1■ 玉木宏樹の“この人と響きあう” 第5回――
    「情けない音」に秘められた純正律の底力
                  リコーダー奏者 金子健治さん

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純正律の強力な味方現わる! 古楽から現代曲まで純正律で自在に表現する東京リコーダーオーケストラを率いるリコーダー奏者、金子健治さんの登場です。玉木氏は以前より、金子さんの活動のひとつである、全員が竹で作った楽器を使うアンサンブル「竹鼓舌(チコタンと読む)」をよく知っており、玉木氏の、天台宗声明とのコラボレーションアルバム『AMINADAB』(日本コロムビア)にも参加してもらった旧知の仲。打てば響く純正律の使徒達の会話とは?
          ―― ―― ―― ―― ――
玉木:こんにちは。ごぶさた。今日はまず、あなたのリコーダーアンサンブルのCDを聴きたいんだけど。〈東京リコーダーオーケストラの『Sevilla』というCDをかけ始める。玉木、1曲聴くなり、感動と驚きの言葉の連続〉
玉木:ね、これって本当にリコーダーだけの演奏なの? まるでポジティブ・オルガン(持ち運びのできる卓上オルガン)みたいな響きがしているけど。
金子:全部リコーダーですよ。
玉木:うわー、このすごい超低音も?
金子:そうです。2メートルぐらいあるコントラバス・リコーダーです。
玉木:〈何曲聴いても感激のためいき〉いやあ、実によくハモっている。これ
こそ、純正律の極致。
金子:リコーダーは、ちゃんとハモらないと、いやな差音が出るんです。
玉木:リコーダーって本来、かぼそい音なんだけど、すごい音圧出てるね。
金子:そうなんです。リコーダーなんて1本でメロディ吹いていてもあまり面白くない。それが何人かでハモった瞬間に、音がすーっと前に出て行って、すごい大きな音になる。響き合うとすごい力になります。
玉木:〈玉木、ヴァイオリンを取り出し、四弦奏用の弓で演奏を始める〉ね、この弓、毛がダブダブだから弦を4本いっぺんに奏けるの。でも、あんまり圧力かけられないから決して大きな音はしないんだけど、こうやってハモると………ホラ!
金子:ほんとうだ。すごい大きな音がする。〈しばらく玉木の演奏があった後でCDライナーの写真を見せながら〉あの、この2メートルのコントラバス・リコーダー、見た目がすごいでしょう。だから、楽器紹介する時なんか、どんなすごい音かとみんなが期待するんだけど、これ1本だけで演奏すると「ヘェェ~」っていう全く情けない音色で、みんなにガッカリされる。でもね、そんな情けない音の上にハモったコードが乗るとね、ものすごい力を発揮するんです。ほんとうに、あの楽器こそが、純正律純正律で響き合った時の力の証明みたいなものですね。
玉木:なーるほど。すばらしい話だ。金子さんは、こんなにすばらしい世界を実践しているのに、もっとみんなに知ってもらわなきゃ。
金子:でも、リコーダーの世界なんて狭いですから……
玉木:だから、リコーダーの世界に閉じこもっていてはダメなんだよ!!
金子:はあ。〈玉木の挑発にも直接のらず、常に温厚でおっとりしている〉
玉木:ところで、ハモる練習なんて、どうしてるの。
金子:まず、2人で完全5度をとって、3人目が「ミ」の長3度を吹く。そして、だんだんハモるようになったら、何度もカノン(輪唱)をやります。
玉木:〈我が意を得たり、とばかり〉そう! それだよ。僕がいつも合唱の人たちに言ってることと全く同じ。カノンこそが一番の練習。嬉しいね、僕と同じことを実践している人がいるなんて。
金子:僕は、合唱もやってましたから。
玉木:失礼だけど、金子さんはどういう経歴なの。
金子:僕は尚美で、指揮科です。
玉木:楽器はなに?
金子:もともとはトロンボーンやってたんで、ノンビブラートの楽器がハモらないと悲惨なのは分かっていました。
玉木:〈ここで、シスターン・チャペルのCDをかける〉このCDね、40秒もナチュラル・エコーのある場所で、トロンボーン10人がハモる練習をしてる。1人でも音程を外すと、それが40秒残っちゃうからみんなの迷惑になる。
金子:このCDはすごいですね。
玉木:残念だけど、もう手に平らない〈←実に自慢気〉。ところで、金子さんはそれからどうやってリコーダーに行ったの。
金子:リコーダーには元々興味を持ってたんだけど、合唱の指揮なんかもやっているうちに、リコーダーでハモってみようと思って始めたのが、今のアンサンブルです。
玉木:いやあ、実にいいアンサンブルだよ。もっと広めなきゃ。僕も協力するよ。今度ぜひ、うちのミニコンサートに、ゲストで出演してもらえないかなあ。
金子:はい。喜んでやります。
玉木:話変わるけど、小学校ではリコーダー教えてるよね。あれについて、何か言いたいことある?
金子:学校用のリコーダーって、プラスティックなんですね。それで、みんなバカにしてるけど、プラスティックという材質は、実はすごく安定していて、リコーダー向きなんですよ。うまく吹けば、黒檀とか総象牙にも匹敵するくらいのいい音がする。
玉木:でも、先生がちゃんと演奏法を教えられないから、みんなバカにしてるんだよね。
金子:リコーダーというのは、まず、1つの音をいかにまっすぐ吹くかという練習をしなきゃいけないんです。
玉木:声だって、管楽器だって、みんな横隔膜の訓練をするんだもんね。
金子:そうなんです。そういう基本を教えないで、みんなが勝手に同じメロディ吹いたってしようがない。
玉木:そういうことをみんなに知ってもらわなきゃ。
金子:実は、僕も講師やってるんですけど、最近、カルチャーセンターでリコーダー講座が大流行りなんですよ。
玉木:じゃ、金子さん、儲かってるんだ。〈そしてこの後、同席していた当研究会事務局長の馬場氏と玉木、金子さんとで、対談の続きと称して飲み屋へ〉
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【玉木からのひとこと】
 NHK教育テレビで「ふえのおじさん」(失礼、おにいさん)として有名な金子さんの本職、リコーダーは、純正律で吹かないと、身体に悪い楽器である。今回金子さんと話してみて、つくづくそのことを実感。そして、彼の純正律追及への熱意には頭が下がる思いがする。        〈文責:玉木宏樹〉

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■2■ ムッシュ黒木の純正律講座 第5時限目
「純正律」が届くまで                  黒木朋興
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 音響現象こそ自然の中に刻み込まれた幾何学に他ならない、というラモーの主張は、やがて、数学という学問が他の科学の基礎となっているように、他の諸芸術に対して基盤となるべき法則を提供するのは、その数学的理性を最も体現する音楽に他ならない、という見解にたどり着く。更にいえば、理論面での説得力を有すると同時に感覚に訴えかけることもできる音楽は、数学を凌駕し、すべての科学の規範となるべきである、という一種「神学」的な見解にも繋がりうることを指摘しておきたい。
 そしてラモーは、バス・フォンダモンタルと和音転回の理論の確立により、旋律をはじめとするすべての音楽現象を独自の「幾何学的」和声体系に還元し、近代和声学の礎を築くのである。

◆独・英学者台頭の時代◆
 このような和声学はやがて19世紀のドイツに受け継がれ、リーマンが機能和声の理論を確立する。
 一方フランスはこの時期、音楽に関してはいわゆる停滞期に入るのに対し、さらにドイツでは、医師、生理学者、物理学者の肩書きを持つヘルムホルツが『音感覚論─音楽理論のための生理学的基礎』(1863)を記すに到る。ヘルムホルツはこの著作の中でreine Stimmung[純正律]の美しさの重要性を強調しているわけだが、彼の弟子には「純正調オルガン」を作成した田中正造氏がいるということを指摘しておく。このヘルムホルツの仕事を受け継ぐのが、『諸民族の音階』(1885)という書物によりセント法を世に広め民族音楽学に多大なる功績を残したイギリス人、ジョン=アレクサンダー・エリスである。彼の功績はヘルムホルツの著作を英訳した(1875)ことにあるわけだが、特に増補改訂第2版(1885)はより多くの世界に広まり、現在の日本においても「調律技術者の必携書」として大きな影響力を保ち続けている。
 さて、このエリスであるが、彼はこのreine Stimmung[純正律]に対して、just intonationという訳語を当てている。ここで、フランス語の学術書において純正律を指すintonations puresやgamme naturelleという表現に英語のjust intonationのことであるという但し書きが付いていたことを思い起こしておこう。すなわち、自然倍音列という現象自体は17~18世紀のフランスにおいて綿密に観察されたものであり、その意味でメルセンヌ、ラモーといったフランス人の手によって純正律研究の礎が築かれたことに疑いはないが、純正律という言葉自体は19世紀のドイツで脚光を浴び、その後ドイツ語の著作の英訳を通じて世界に広まった、ということが言えるのである。

◆そして音楽も自立する◆
 フランスから発し、ドイツ、イギリスを通じて世界に広まるというこの図式に関して言えば、純正律の問題に加えて、「絶対音楽」の理念について語っておくことも決して無意味なことではないだろう。簡単に言えば、西洋キリスト教文化においては長い間、音楽をあくまでも詩に従属したジャンルと見なしていたのに対し、そこから「言葉=テクスト」から切り離し独立したジャンルと認めようと言うのが「絶対音楽」の理念である。既に見たように、ラモーが音楽とその和声論にすべての学芸の規範となるべき法則を見出していたことを考えれば、そこに音楽の自律という「絶対音楽」の理念の萌芽を見て取ることも可能だろう。しかし彼が最も作曲に心血を注いだのは「叙情悲劇」というフランス固有のオペラであった。そしてこの「叙情悲劇」に対立する概念がラシーヌに代表される「古典悲劇」であることを考えれば、ラモーの活動はあくまでも文学の領域に留まるものと見なされる、ということを指摘しておく。
 いずれにせよ、17~18世紀にフランスで培われた音楽文化が、現在の我々のもとに届くには、1回、ドイツを経由しなければならなかったのである。

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■3■ 天国的純正律音楽入門 第5回
    続・ビブラートの正体について
       純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
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 クラリネットは大体、1700年頃発明(というか古楽器の大改良)されており、種々の改良を経て、モーツァルトの後期の交響曲(特にNo.39)にも取り入れられ、また、モーツァルトの代表曲として、クラリネット協奏曲、クラリネット五重奏がある。モーツァルトの後期は、クラリネットと共にピアノフォルテのチェンバロ(ピアノの前身)も登場し、ベートーベンへと受け継がれ、音楽の在り方が激変する。
 ところで今、古楽ブームがあり、モーツァルト・チューニングとして、今よりも約半音低い音程でのアンサンブルが流行っている。そのアンサンブルは、原則的にはソロ以外はノンビブラートである。
 パガニーニ時代のヴァイオリンは、ソロでさえノンビブラートだったらしい。ヴァイオリンのビブラートが一世を風靡したのはサラサーテの登場以来といわれている。

◎昔気質の新人・クラリネット◎
 さて、リード系の木管楽器の場合、オーボエもファゴットもどちらかといえば音程がふらつき易く、特にフルートは音程が安定しにくい。モーツァルトはフルートの曲も残しているが、内心、フルートは音程が悪いから嫌っていたようだ。ハモることを前提にしていた古典派の演奏で、オーボエやフルートをノンビブラートでハモるのはなかなか難しい。そこへさっそうと現れた新楽器クラリネットは、その音色のせいもあって、ノンビブラートでハモった時がすばらしく美しい。だから、一番よくハモる楽器として登場して以来、ずっとその伝統が受け継がれてきたのではないだろうか。
 もともと音程の不安な複リード楽器はビブラートに頼るようになり、昔のようなハモりの響きが失われていったのが現代のオーケストラであり、その中にあって未だに頑固にハモりを主張して新しい楽器なのにコンサバになってしまったのは大変面白い。
 話は変わり、ビブラートには2種類あるのはお分かりだろうか。たいていのビブラートは、確固とした基音の音程があり、その基音を中心に、上下に音程変化をさせる方法。弦楽器、フルート、方法論の特殊なものとしてビブラフォンやエレキピアノもこの部類。昔、ハモンドオルガンのビブラート用にレスリーというエフェクターがあったが、これは実は扇風機であり、羽の回転によりディレイのかかった音程変化が得られる。原理的にはビブラフォンと同様である。ところが、基音のないビブラートがもう一種類。それはブラス系のビブラートと人間の歌声のビブラート。これは確固とした基音はなく、ある幅で、基音と思われる音の周辺のをはっきりと音程変化させている。なかなか説明するのは難しいが、トロンボーンのようにスライド式の楽器のことを想像すると分かっていただけると思う。人間の歌声がまさにこの方法であり、オペラアリアのトリルなんか、ビブラートを激しくしただけのことであり、あまりビブラートとの違いははっきりしない。なんとなくビブラートの幅が多くなっただけのようでもある。

◎歌声のようなvln二胡奏法◎
 ところで、同じ弦楽器でも中国の二胡という胡弓のビブラートはヴァイオリン族とは全く違い、歌のビブラートと同じように音程変化で表現する。二胡にはもともと指板がないので、安定した音程を作りにくいが、弦を深く押さえることによって音程は高くなる。だから二胡のビブラートは弦の押さえ方の強弱で表現する。ギターでいえばチョーキングであり、シタールも全く同じである。
 私は自分のヴァイオリンで二胡風のビブラート奏法をするが、これは左手の一本指だけで演奏する。音程の上下関係でかけるビブラートはほとんど二胡風で、全く、ヴァイオリン的ではない。
私はある時、ソプラノとのデュオの仕事があり、このビブラートを使ったところ、ソプラノが2人いるように聞こえた。ヴァイオリンが一番人間の声に似ていると言われるのには、このような演奏方法をしないと分からないのである。

■4■ 癒しの現場から ――陽幸堂 峰咲マーユさんにきく その3――
    もう一度子どもになってみよう!
                             田村圭子

  純正律音楽研究会の皆さんにはおなじみ、峰咲マーユさんのお話の3回目をお届けします。前回、マーユさんの多彩な活動の一つである「音」への取り組みについてお聞かせいただきました。今回は、現代に生きる私たちへ向けたマーユさんからのメッセージです。

☆音色のあふれる絵画☆
 前回、「音が出す波動で血液がキレイに→痛みがとれて愉快に→みんながイキイキ→景気回復」という事、そして自分で自分の身体は治せるんだという自信を持つことが大事だということを伺いました。このように、音が人間にもたらす様々な効果について研究・実践をなさっておられるマーユさんは、よく絵をお描きになる方でもあります。
 CD『第3の夢』のジャケットに使われたペガサスの絵も、マーユさん御自身の手によるもので、実物は畳より大きな作品でした。お話を伺った際に、マーユさんの絵画作品も何点か拝見させていただいたのですが、まず感じたのは、どれもキャンバスから「音」が聞こえてくるような作品だなあ、ということでした。

「私が絵を描く時は、まず、先に音が持つイメージあって、それらが形や色に変化して、私の前に現れてくる、それを描くんです。それは、いわゆる音楽だけじゃなくて、風の音とか人の話す声、全ての音からイメージが浮かびます。例えば、今話している田村さんの声からは、そうですね、深い森の中でひっそりと生えているキノコの様子が浮かんだりします」〈峰咲マーユさん〉

 聴くことと見ることの深いつながりを改めて実感させられるお話です。感覚の重要性が、筆者が想像していた以上のものであることがだんだんわかってきました。しかし、私達の身体は全ての部分がつながって、バランスをとりあってできているものであるならば、今の時代の私たちを取り巻く劣悪な環境が、身体に影響を与えないわけがありません。こんな時代、私たちはどうやって生きていけばよいのでしょうか。

☆知識が体調を損ねる☆
「私たちが本来持っている感覚を呼び戻すことです。先に、現代人は知識で生きていると言いました。でも、知識がかえって具合を悪くさせることもあるんですよ。例えば食べ物ひとつとっても、犬なんかは臭いをふんふんと嗅いで、悪いと思ったら食べない。犬はね、臭いを嗅いで、鼻で舌で臭いで味わってるんですよ。で、これはまずいと思ったら食べない。人間も本来そうだったんです。子供なんかにはそういう子、いますよね。先日きいた話ですが、ある子ど
もが『このイカ要らない』って言っていたと。親が、食べなさい、というと『イカが黒いからヤダ』っていう。でも親が見ると黒くない。で、親は食べた。その子は嫌がって、いくらすすめても食べないから放っておいたら、親はその日の晩からものすごい下痢をしておなかを壊したのにその子ひとりだけ元気だったんですって。だから子供って、そういう、感覚が強いんじゃないでしょうか」

 よく、3歳ぐらいまで、子供は動物の状態だと言われます。幼児はたしかに「知識」を持たず感覚にのっとって生きています。現代に生きる私たちは、技術の「進歩」と情報の蓄積のお陰で便利な生活を手に入れ、引き換えに、本来持っているはずの感覚を失ってしまったように見えますが。

「感覚は衰えてますよね。でも、なくなってるわけじゃないです。だから、訓練するとまた戻ってくるんです」

 そう言っていただけると少し光明が射してきたような気がします。でも、例えば筆者のようにあまり若くもなく、また東京の騒がしくて情報が溢れ返っているようなところに住んでいても、取り返しがつくのか、まだ不安です。

「感覚は取り戻せますよ! こういう時代に生きていくんですから、不衛生で環境の悪い中でより楽しく生きるのが人間の強さですよね。だけど、環境が悪いからとか、アレルギーを気にしたり、あんまり構いすぎてどんどん弱くなっていってるということはあります。ドブネズミなんか、人間から見れば不衛生な中でも悠々と生きてますよね、難無くたくさん子供産んで。子供産むったって、産婦人科もないんですよね、ネズミや犬の世界って。なのにたくましく生きている。人間は『黴菌が入る』って『衛生的な』ところで大騒ぎして子供を産む。実はね、『お産が痛い』という知識、『汚いのは、病気になる』という知識で病気になっちゃうんですよね。子供は知らないから、その辺の落っこってるもの食べてるじゃないですか(笑)。大人になると、『これには黴菌がついている、うわーっ』て思うから、それを食べたら『あーっ、食べてしまった』と思って病気になるんです。子供は知らないから、美味しそうと感覚がとらえれば食べちゃう。だから、知識の有無で、感覚の衰え方はずいぶん違ってきますよね。子供は落ちているものを食べるといっても、これが本当に自分にとって悪いものだったら食べないです。まあ、小さなネジや乾電池のんじゃったというのは、現代的な興味からですけどね。だから情報や知識だけに頼らず、自分の感覚を意識していけば、取り戻すことは十分できますよ。たとえ80歳になっていても大丈夫、できるんです!」

 なるほど、大自然の美しさにふれたり、美しい響きにつつまれること、それは、ただ単に、安らぎを得るためだけではなく、自分の身体を知り、自分の感覚を研ぎ澄ますことへとつながり、ひいては「よく生きる」ことへとつながっているということがよくわかりました。そして、純正律はそんな私達の強い味方になりそうです。
 なんだか、荒廃した現代にあって、生きる自信が湧いてくるようなお話が伺
えました。                           【了】
★陽幸堂――Tel. 03-3235-7535
      東京都新宿区市ヶ谷本村町3-26ホワイトレジデンス9-B

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■5■ 外科医のうたた寝☆その4   医者の不養生(1)
        福田六花(純正律音楽研究会発起人:医学博士、作曲家)

 突然入院することになってしまった。しかも手術付きである。1ヶ月程前から右目の視野のはじっこがなんだか欠けるような気がしていたが、急に見えなくなってきた。同じ病院の眼科医に診てもらったところ、なんと網膜剥離と診断された。なるべく早急に手術を受けないと失明する危険があると云うので慌てて荷物をまとめて、紹介された〈K眼科病院〉と云う眼科専門の病院に入院した。
 毎日病院で働いているが入院するのは初めてのことであり、少々戸惑いつつも興味津々である。部屋に案内されるとパジャマに着替えて、スリッパに履き替え、コップ、タオルなどをサイドボードに並べてからベットにゴロッと横になってみる。数日前まではトライアスロンの大会に向けてバリバリにトレーニングをしており、体力には絶対の自信を持っていたはずなのに、こうして病室に横になると妙に心細くなってきた……。と感傷に浸るまもなく、次々と看護婦さんが部屋にやってくる。明日は手術であるから血圧を計ったり、心電図を取ったり、入院承諾書〈入院費は決して踏み倒しませんと云う誓約書〉、手術承諾書〈失敗しても文句は言いませんと云う誓約書〉を書かされたり。やっと終わったら夕食を食べて、目薬を差してすぐに眠らなくてはいけない。
 翌日はいよいよ手術である。朝から目薬をやたらに差して午後一番で手術室へ行く。ストレッチャー(搬送用担架)に横になり点滴を刺していよいよ手術室へ。10数年間にわたって、毎週毎週患者さんのおなかを切るために手術室には入っているが、自分が切られるのは初めてでありとても妙な気分である。右目のところだけ穴の開いた滅菌シートを全身にかけられ、目の周りを入念に消毒され、麻酔薬が点眼されていよいよ手術である。
                   【以下次号に続く、乞うご期待】
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CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW
■6■  純正茶寮             黒木朋興×玉木宏樹
     ――Trio Patrekatt『Adam』(xource/xoucd 119)――

祝・復活! 今号は黒木朋興氏担当でお送りする純正茶寮です。氏がフランス在住のため以前のような黒×玉コンビの対話形式ではお届けできませんが、玉木氏によるコメントも付けてみました。
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今回のTrio Patrekattは、第1回に続き、またスウェーデンのグループです。というのも、第1回目で紹介したROSENBERGS SJUAのCDでセロを弾いていたミュージシャンがこのグループにも参加しているからです。ROSENBERGS SJUAがきれいなハモった歌声を聞かしてくれていたのに対し、今回のは完全なインストです。
で、このCD『Adam』で面白いのは、他の2人が弾いているニッケルハルパというスウェーデンの民族楽器です。音色はヴァイオリン、フィドロ系の擦弦楽器ですね。ところが皆川達夫監修『楽器』(マール社、1992)を見てみると、弦楽器のページではなくて機械楽器のページにハーディ・ガーディなんかと一緒に紹介されている。音高を決めるのはハーディ・ガーディと同様に鍵盤を使って機械的に弦を押さえるんですが、弦を擦るのにはハーディ・ガーディが機械になっているのに対し、ニッケルハルパはヴァイオリンのように弓を使わなければならないんです。
              ◆ ◆ ◆
ちょっと聞く限りはフィドロのように聞こえるんですが、よく聞いてみると、鍵盤を押さえるかちゃかちゃいう音が入っているでしょ。僕が面白いなぁと思うのはね、つまり、ヴァイオリンみたいにフレットレスの楽器は純正律に向いていて、ギターやピアノみたいにフレットがあったりして音高が固定されている楽器は純正律に向かないって信じている人、割と多いんですけど、この程度の曲をやるんだったら、別に無理して平均律に調律しなくても、使う調を限定してやれば十分ハモリのきれいな音楽ができるってことですよね。
純正律では音楽的に幼稚なものしかできないって迷信がありますけど、この程度で十分だと思うし、僕なんかからすれば、このCDでも音楽的に随分高度だなって感じるんですよ。だったらね、巷に流れている音楽の9割以上が工夫次第でハモリを追求できるんじゃないかって。
何もドデカをことさらに悪く言う必要もないとは思いますが、ドデカをやるんじゃないんだったら、別に無理して平均律にしておく必要なんかないですよね。音大の人ってなんか「複雑な転調すること=音楽的に高度」って考えてるような気がするんですけど、僕はね、転調なんかしなくたって十分面白い音楽作れると思うんです。
               ◆ ◆ ◆
あ、別に転調しちゃいけないなんて思ってないですよ。ボサノバ好きだし。で、玉木さん、このCDお聴きになって、どの範囲で調が制約されてるってわかります? 僕は個人的に12曲目の「FARDEN」が好きです。倍音がきれいに響いてるでしょ。これってどういう弾き方してるんですか。
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~~comments from Mr. TAMAKI
あの楽器は実に不思議で、見事な純正律でハモっています。調律は多分、ソレソレのGチューニングだと思います。コード進行が単純な分、とてもスリリングなリズムの速奏きフレーズが感動ものです。No.12の曲の奏法は、ヴァイオリンの駒の近くを奏くことによって、高倍音、時にはガラスを引っ掻いたような音も出ます。これはイタリア語でスル・ポンティチェルロといい、我々は「スルポン」と呼んでいます。現代音楽に多く使われています。多分、ギターにも、特にエレキの場合なんかに、似た奏法があったような気がしていますが。

INFORMATION

 Trio Patrekatt『Adam』(xource/xoucd 119)

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■7■ Letter Rack~会員の皆様からの投稿コーナー~

  ⇒この号から、会員の皆様からのおたよりや投稿を御紹介するコーナーを設けました。皆様の声を研究会宛にお寄せください。テーマ、内容によっては、独立した原稿として掲載させていただくこともございます。本誌末尾の宛先までどしどしお寄せください。その他、御意見、御提案等もお待ちしておりますので、随時お寄せ下さい。

《Smooth Jazzはいかが?――酒井善樹》
正会員の酒井と申します。今回、Smooth Jazzについて御紹介させていただきます。
http://www.aquarianwave.com サイトでおなじみの方々もおられると思います。
Smooth Jazzは、Jazzの中でもとりわけハモリや美しいメロディーを意識して作られる音楽で、純正律音楽とも密接な関係があります。これからこのジャンルの音楽を聴いてみたい方向け、おすすめCDの紹介、作編曲/演奏などされているプロ/アマの方向けに、Smooth Jazzの音楽技法や定期的に集まってワークショップなどを私のウェブサイト連動で行っていこうと思っています。
ご希望など、ぜひお寄せください。
●いまお薦めのSmooth Jazz
 Peter Whiteの新譜『Glow』(SONY)
●酒井善樹さんのサイトはこちら
  http://www.aquarianwave.com

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■8■ →→→純正律かわらばん

●玉木宏樹新著、満を持していよいよ刊行
 『純正律は世界を救う――身体にいい音楽、悪い音楽』
 12月20日発売開始!

�お待たせしていた玉木宏樹新著が、12月20日に、その名も『純正律は世界を救う』と題して刊行の運びとなりました(文化創作出版刊)。うるさい音楽を根本から覆す純正律の普及を願って、調律の歴史と理論を真摯に掘り下げるとともに、日本の音環境の改善に向け真正面から提言を行っています。執筆も佳境に入った9月11日、あのニューヨークのテロ事件が起こりました。たかが音楽、されど音楽。いったんは無力感に襲われながらも、玉木氏は純正律の音楽は人々に安らぎと生きる力を与えることを確信し、本書が完成しました。前著『音の後進国日本』以後、先進国になれたとはとても言えない状況ですが、駅メロ騒動の後日談やヒーリング効果の側面、ネット時代の音楽の未来と著作権問題など、日本の音と音楽について考えなければならない問題を歯切れ良く捌きます。
「第4章 純正律の歴史と19世紀の調律のことなど」の章では玉木氏の純正律への拘りの原点がつぶさに語られ、一気にひきずり込まれます。より多くの方に純正律音楽に触れていただくための強力な1冊です。
              〈純正律音楽研究会事務局長・馬場英志〉
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 ※リニューアル・キャンペーンで御予約を頂いた皆様、大変お待たせしまして申し訳ございませんでした。刊行次第、いち早くお届けいたしますので、お楽しみに。なお、『純正律は世界を救う』は全国の書店でお求め頂けます。店頭に無い場合は取り寄せてもらえます。(送料がかかりません)
 また純正律音楽研究会でも通販を承ります(ネット会員割引あり)ので、どうぞ御利用ください。
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■9■  @@@@@西麻布通信@@@@@

◆研究会のリニューアル、CD・新刊リリースと、事務局は怒濤の秋をおくっております。『アポロンのたわむれ』はいかがでしたか? CDもいいのですが、四弦奏ヴァイオリンの威力を知るならやっぱり生。その破壊的ともいえるパワーに圧倒されます。ミニコンサートや「土曜のお茶会」等で是非、そのすごさを体感してください。
◆11月24日のピュア・ミュージック・サロン「土曜のお茶会」は満員御礼。玉木氏の演奏をはじめ、最新純正律CDを聴いたり、みんなでカノンを合唱したり、ドクター六花氏のオリジナルソングも聴けたり、あっと言う間の2時間。最近はすぐ御予約がいっぱいになってしまうので、お早めのお申し込みをおすすめします。
◆レアな純正律情報満載のピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会の公式ホームページが、いよいよ近日オープンします!

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 〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2(有)アルキ内
Fax. 03-3407-3726 / E-mail: archi@ma.rosenet.ne.jp
 純正律音楽研究会 まで

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とりあえずいちばん速い純正律情報はこちら!
 →玉木宏樹のホームページ
  URL :  http://www.midipal.co.jp/~archi/index.html
*近日オープンのピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会
公式ホームページに御期待ください。
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