玉木宏樹 水野佐知香 黒木朋興 峰咲マーユ 田村圭子 福田六花(2001年5月11日発行)
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純正律音楽研究会会報『ひびきジャーナル』 {創刊第4号}
2001年5月11日発行
編集/発行:純正律音楽研究会
〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2 (有)アルキ内
Tel. / Fax. 03-3407-3726
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萌える若葉の緑が目にまぶしい季節となりました。
みなさま、ますます御清祥のこととお慶び申し上げます。
毎度のことながら超不定期刊となっている当研究会の会報ですが、ようやく第4号が出来ましたので、お届けいたします。
2001年に入ってからも、新作CDの発表~ヤマハホールでの拡大版コンサート、小さなお茶会等、既に研究会としては様々な活動を展開してきております。
また、取材等を受ける機会も増えており、純正律への認知が確実に多方面へと拡がりつつあることを感じます。これもみなさまのお力添えあってのこと。
みなさまの御意見を吸収し、さらに発展させたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
純正律音楽研究会代表 玉木宏樹
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――玉木宏樹の“この人と響きあう” 第4回――
ヴァイオリン奏きは天才である!
ヴァイオリニスト 水野佐知香さん
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今回のお相手は、ソロからオーケストラ、古典から現代曲まで幅広く御活躍中のヴァイオリニスト・水野佐知香さん。最近では、娘の章乃さんと共演したヴァイオリン・デュオCD『母と娘とヴァイオリン』(編曲はもちろん玉木宏樹氏)で皆さんにもおなじみですね。同じヴァイオリン奏き同士、息の合ったふたりだからか、始終笑いと歌声(ここで再現できないのが残念!)に満ちた対談となりました。さて、おふたりの語るヴァイオリン奏きの悩みとは。
玉木:先日はお疲れさまでした。
水野:いえ、どういたしまして。タンゴって初めてやらせていただいたんですけど、お陰でいい勉強させていただきました。
玉木:これは会報に載せる対談なんで純正律に関することもお尋ねするんですが、日頃はヴァイオリン奏く時に平均律だ純正律だって意識することあまりないでしょ?
水野:ないですよ。ただ、ヴァイオリンという楽器は平均律っぽく音をとらなきゃいけない部分もあって、ピアノなんかと演る時には、やっぱり平均律気にしながら純正調にとれればいいなっていう思いはあるんですけど。
玉木:その辺、辛いところがあるんだよね。でもそれがすごい重要な点。「純正律がああだこうだ」と理屈で言っても始まらないんで。
水野:そうですね。でも今回のバッハのガヴォットとかはすごくよかった。
玉木:自分でアレンジしてても、こんなに見事に純正律はハモるものか、とね。ヴァイオリン2人だけだと聴き合わせて奏けるじゃない。2人でピタッとハモった空間でバッハなんか演奏すると、もうそれだけで純正律になるんだよね。
水野:私もう、1人で奏きたくないんですよ、どの曲も。自分のパートを弾いてると章乃の音が聞こえてくるような気がして寂しくて。そうやって聴き合うっていうのは、自分の音程が間違ってたらハーモニーも濁るってことだから、今回の楽譜になった曲も、ヴァイオリンをやる人にとってはとても勉強になるんじゃないでしょうか。この楽譜ね、マンドリンやフルート、オーボエ、クラリネット、ヴィオラとかチェロでも使えるの。そういう意味では純正律の勉強もできるんじゃないでしょうかね。
玉木:聴き合ってやらないと気持ち悪くなるんだ。特にバッハのガヴォットみたいなのはね。あれはもともと悲鳴の出るほど難しい曲だしね。大体、ホ長調なんてさ、ヴァイオリン奏きにとっては地獄みたいなもんだからね。G線のD#がすごいイヤなんだよね。
水野:そうなんです。この間レコーディングの時、D#を低めにとってて、ぴったり合ってたんですけど、今回はちょっと高めにとった方が合ったんですよ。これは調子にもよるんでしょうかね?
玉木:お互い聴き合わせていれば、いつも融通無碍にハモる音程とれる。コーラスもそうだからね。
水野:そういう意味では純正律でとってると耳の発達って違うんじゃないですか?
玉木:本当のハモりを身に付けないとね。今の教育ってピアノの音程だけが正確とか教える傾向あるじゃない。コーラスだってピアノの高いミの音を押し付けててハモるわけない。
水野:私、それ、ちっちゃい頃から悩んでたことなんですよ。
玉木:ヴァイオリン奏きはみんなそれで悩む。悩まないでそのまま放棄しちゃうのがほとんどだけどね。
水野:口で言っててもどうしようもないですもんね。
玉木:そういう意味で、こういう楽譜とかCDが広まっていけば、自然発生的に純正律が認知されることになるかなと。僕が1人で運動してる時にはあれこれ理屈を言うけれど、ヴァイオリン2本でハモってる分には理屈がないからね。
☆ヴァイオリンなら融通無碍☆
玉木:ちょっと難しい話になるけど、3月12日は「純正律のコンサート」ということで、後半はピタゴラスでやったんだけど、ピタゴラスと平均律と純正律の区別って意識してる?
水野:私は全然。
玉木:2人でハモる時は協和するから純正律になってる。あれはあれですごいいいわけ。ところが、普通のヴァイオリン奏きはね、メロディ奏く時は純正律でメロディとらない。みんな高めなの。
水野:高めですね。そうやって習ってきました。
玉木:ヴァイオリン奏きは特に導音を高めにとる。シが高いの。それで、ソに行くファのシャープが高い。ピアノよりも高い。これがピタゴラスなんだよ。
水野:そうなんですか、へえ~!
玉木:だから、ヴァイオリン奏きは、常に協和的純正律とピタゴラス純正律を奏き分けてるわけ、無意識のうちに。
水野:すごいことですね、それは。
玉木:そういうこと、ピアノの連中は分かってないからねえ。ヴァイオリンの調弦で、ソレラミってハモらせるでしょ、あれがピタゴラスなの。あの中で協和的純正律をやるのは、実はちょっと無理がある。ドミソ、ドファラ、シレソの和音を、全部きれいにハモるように並べ替えたのが純正律なんだけど、その時に、絶対使えないのがレとラなの。レファラにすると、今のピアノは12鍵しかないから地獄の音になっちゃう。
水野:じゃ、何鍵要るんでしょう。
玉木:ピアノでやるなら53鍵。
水野:ははは。
玉木:だからヴァイオリン奏きの方がもっと楽に融通無碍に音を出してるわけ。平均律になる前にはいろんな調律法があったのね。モーツァルトはミーントーンという中間音律だった。これはドとミの協和がすごいキレイなの。今は古楽の連中がそういう調律でどんどんやってるからね。ブリュッヘンだったかが日本に来てモーツァルトのミサ曲やったけど、ヴァイオリンもリコーダー系もコーラスも全部ノンビブラートで、ものすごいハモってた。ゾクゾクしたよ。
水野:それはキレイだったでしょうねえ。今はごまかすためにビブラートかけてるんですもんね。
玉木:本当に。ビブラートって、いつ誰が発明したか知ってる?
水野:知らない。
玉木:ビブラートを発明したのはサラサーテなの。サラサーテのぬるま湯のようなビブラートが世界中にものすごく流行したの。だから、メロディを目立たす時には、何も言わなくてもみんなビブラートかける。
水野:じゃあ、ヴァイオリン奏きは天才ですね(笑)。
玉木:そ。天才! どの楽団で奏くかにもよるけど、タンゴのヴァイオリン奏きってすごい目立つのね。あれはね、ものすごいビブラート速いし、総て音が高めなの、バンドネオンやピアノに比べて。
水野:音質が? 音程が?
玉木:音程。ピタゴラスで奏くから。平均律じゃ奏けないもん。ピアノのミっていうのは純正でハモるミよりも100分の14も高いのね。で、ピアノの高さでFをとってラの開放弦奏くと必ず濁るの。
水野:わかります。
玉木:だから、そのファを濁らせないためにはこっちは高くしなきゃならない。本当は、ピアノのFに高さをとったら、3度は開放弦で奏いちゃいけないんだよ。ま、そんな矛盾を抱えながらなんとなく通過してるけどね。
水野:それが人生ですか(笑)。全部パーフェクトだったら面白くないでしょ。な~んてね。
玉木:ヴァイオリン奏きながら作曲する人間はほとんどいないからね。僕はヴァイオリン奏きの悩みってすごいよくわかってるから。どういう譜面書いたら易しいけど難しそうに聞こえるか、とかね(笑)。
〈文責:田村圭子〉
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{{{{{{ ムッシュ黒木の純正律講座 第4時限目 }}}}}
ジャン=フィリップ・ラモー、現わる
黒木朋興
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モノコルドと呼ばれる弦が1本だけの楽器がある。楽器と言っても、演奏用ではなく音程比の実験のためのものだった。中世の頃から使われてはいたが、自然倍音の発見に続く17世紀から18世紀にかけての時代において、物理学者達はこの楽器に改良を加え、実験室の中での自然倍音の分析に心血を注ぐことになる。例えば、音響学の基礎を築いたと言われるソヴールが有名だろう。やがて、ジャン=フィリップ・ラモーが現れる。
一般に〈光の世紀〉と称されるこの時代において、彼は独自の和声論を展開しフランス和声学の礎を築くとことなる。他の物理学者と同様、ラモーの仕事においても倍音列の分析は重要であり、当然、彼は、現在純正律と呼ばれるシステムについては熟知していた。また1726年には「変化記号が違えば、音の間隔が様々に違ってくる印象を受ける、という指摘をするのは好ましいことである」と言っているのだから、少なくともこの時点ではまさに不等分律の推奨者であったのだ。
◆実験の対象としての倍音◆
ところが1737年の著作において彼の関心がモノコルドによる倍音分析から和声進行のほうへ移っていくのに伴い、こともあろうに平均律支持を表明するに至ってしまう。どういうことなのだろうか。
ただ1つの音を対象にしてその倍音列をいくら観察・分析したとしても、それはあくまでも音響の研究なのであり、実際の曲作り、つまり音をどのように組み合わせ和声を進行させていくかということに対しては、距離があることは否めない。だいたい倍音を観察するにしても、雑音のしない実験室において均質な材質からなる良質な金属弦を響かせて行われ、更にそのために使われるモノコルドにしたところであくまでも実験用の楽器であり実際の演奏に用いられることはないのだ。また何よりも純正律では使える和音が限られていることを考えても、実用向きではなくあくまでも実験室の中だけの音階である、という感があったことは否定できない。
だから興味の中心を和声の成り立ちから具体的な和声進行に移していったラモーが、純正律ではなくより実用的なテンペラメントを求めたというのも納得のできることではあるだろう。
◆ラモーは転向したのか?◆
以上からすれば、ラモーは1737年にかけて思想上の大転回をした、という解釈も可能だ。しかし、実のところ、ラモーの側からすれば回心したつもりなどこれっぽっちもなかったのではないだろうか。つまり、彼の思想には断固とした連続性を見いだすことができるのだ。それを一言で言えば、一見複雑な現象に見える音楽を理性的な秩序のもとに体系付けようとする意志であったと言えるだろう。
つまりデカルト主義者を標榜するラモーにとって、自然現象は全て理路整然とした幾何学的な体系に基づいているべきものであり、しかもその体系は数学でもって解析できなければならない。
ここで、Natureという言葉には〈自然〉という意味と同時に〈本質〉という意味があることに注意したい。〈本質〉とは目の前に広がる風景のことではなく、〈神〉が取り決めた秩序のことだ。たとえ倍音列から得られる音階が不等分なものであろうと、それはあくまでも見せかけの〈自然〉にしかずぎず、〈本当の自然〉は〈目に見えない〉ところにあるのであり、そこは理路整然とした幾何学的な世界なのだから、当然平均律こそがその〈自然〉をものの見事に表象している、ということになる。そしてラモーにとって、音楽こそがこの数の秩序が統べる理想の世界を最も良く体現している芸術なのであり、音楽はこの世の知性の全てを握る芸術とならなければならない。
もちろん、この時代においては技術的に現在のような正確な平均律の調律は不可能であり、それはあくまでも理想の領域にある、ということはつまり「絵に描いた餅」にしかすぎなかったということを言い添えておく。
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天国的純正律音楽入門 第4回
ビブラートの正体について
純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
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今回はビブラートの話。
私はヴァイオリン奏きなので、ビブラートをかけるのは絶対的な日常性なのだが、この、一見純正律とは相反するような奏法について考えてみたい。ただし、ビブラートの歴史や必然を述べている著作にはほとんど出合ったことがないし、大部分は自分の体験上の裏付けによっているということを前提にするので、私が間違った記述をしたり、または別の角度からの意見があったら、ぜひ、投稿するなり私のホームページの掲示板に書き込むなりしていただきたい。また、今回だけでは書ききれないようなので、次回もしくは次々回にわたって書いていこうと思う。
◎「特権」としてのビブラート◎
さて、ビブラート(英語ではヴァイブレーション)は、ある音程を基音に、微妙なピッチの上下によって「ふるえ」を生じさせ、強弱等のエモーションを強調させる役割を担っている。
現代の大人の演奏は、ソロの場合、歌でも音楽でもほとんど無自覚にビブラートをかける。古楽や小アンサンブルのコーラス、ブルガリア系のコーラス以外は、全く無自覚にビブラートをかけて歌うので、コーラスの場合、ハモることを全く度外視して悲惨な結果を招いている。大多数のママさんコーラスはもとより、プロと称している合唱団も総て、ハモるのが基本の「純正律」上から見ると死刑に値するほど勝手なビブラートをかけあって、何が何やら分からぬ騒音集団と成り果てている。
天国的な協和を目指す我が純正律音楽研究会に於ては、こういう騒音は退治してまわらなければならないのだけど、その代表者たる私・玉木がヴァイオリンを奏くと、ほとんどの場合、ビブラートをかけっ放しである。私がよく純正律のカラオケ・テープに合わせて奏く場合でも、バックはノンビブラートなのにソロ・ヴァイオリンはビブラートをかけまくっている。そして当然、ビブラートをかけた瞬間の(譜面の)「たてわり」は明らかにハモってはいない。これはどういうことなんだ! 結論から先に言ってしまおう。ビブラートをかけることができるのはソリストの特権なのである。
少し視点を変えよう。通常のクラシック楽器の場合、ほとんどはビブラートをかける。ただし、ハープやピアノ、ギター等、音が伸びない楽器はビブラートをかけられないし(遅い曲におけるギターを除く)、そういう楽器の場合は音が伸びない部分で速いパッセージやアルペジオを多用する。この「速いパッセージ」は後ほど重要なテーマになるので覚えておいてほしい。
◎クラリネットの謎?◎
ところで、音が伸びてもビブラートをかけない楽器がある。それは、大部分のホルンとほとんどのクラリネットである。ホルンの場合、ソロよりも4人くらいのアンサンブルの方が効果的であり、その場合は、ノンビブラートで完全にハモらないと、吹いてる人達も聴いている方も非常な不快感に襲われる。ウェーバーの「魔弾の射手」の序曲のホルンが銘々ビブラートをかけたら、地獄に落ちた狼のような響きがするだろう。
そして、木管楽器では唯一、クラリネット。この楽器はもちろんビブラートがかけられないのではない。ベニー・グッドマンをはじめとしたジャズ・クラリネット奏者は、物の見事に魅惑的なビブラートをかけるのに、なぜクラシック奏者はかけないのだろう。私はこれに対する的確な答えをきいたことがない。多分、品がないという理由かもしれないが、それでは、オーボエやフルートは全く下品な楽器ということになる。
私の憶測にしか過ぎないが、クラリネットがノンビブラートなのは、実はクラリネットが一番新しい楽器であることの証拠のように思えてならない。
このあたりの話は次回に続く。
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[癒しの現場から]
「愉快な骨」に響かせて!
――陽幸堂 峰咲マーユさんにきく その2――
田村圭子
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前号に続き、純正律音楽研究会の皆さんにはおなじみ、峰咲マーユさんのお話をお届けします。マーユさんは純正律音楽研究会とのジョイントの他にも、独自にコンサートを催したり、音楽に深く関わる活動をなさっています。今回は、マーユさんの「音」への取り組みについてお聞かせいただきました。
☆体調は《愉快な骨》に現れる☆
CD『第3の夢』のタイトル曲「第3の夢」はセルフチューニング用の曲とのことですが、セルフチューニングとはどういうことなのでしょうか。
「首をがくっと落として自分で触っていただくと、ここに大きい突起、骨があるでしょ。そこから背中に下がっていって3つめと4つめの骨があるんですけれど、ここを私は《愉快な骨》と呼んでいるんです。目の疲れとか風邪とか、首が極端に疲れちゃってる、そういう時にはこの骨が硬くなって、愉快な気持ちを身体の中にしまいこんでしまう。それを見つけて、ちょっとだけ柔らかくしたり、刺激して本来の丸い形に戻してやると、笑えて、楽しい気持ちがわくわくっと沸いてくる。ひとことで言えば、この「愉快な骨」に響かせるような音楽を作りたかったんです」〈峰咲マーユさん〉
そもそも整体や健康指導法が御専門のマーユさん、なぜ「音楽」で、と思い至ったのでしょう?
「疲れや食べ過ぎ呑みすぎでも血液は濁るんですよね。濁ると重くなって動きが鈍くなるから、血管が詰まったり病気が発生したり炎症を起こすという状況になるんです。それを濁らせないように、といっても、食事や飲酒、仕事といった日常生活をコントロールするのは大変ですね。そこで、『第3の夢』のような音楽で音を響かせることによって、少しずつ濁りがとれるような刺激が与えられればいいなと。何年も前から音楽は作ってたんですよ」
その一環として生まれたのが音楽テープ『夢多き方へ』でした。6年前、その制作の際に、偶然録音に参加した玉木氏とマーユさんは運命的な出会いを果たしたのです(当時のエピソードは玉木氏のホームページでどうぞ)。
☆疲れのとれる音楽とは☆
「『夢多き方へ』を作る際、その中のバルカローレの音楽(CD『第3の夢』にも収録された「風の彩」)で玉木さんにヴァイオリンを奏いていただいたら、本当に素晴らしかったんです。この録音を聴いてると、玉木さんのヴァイオリンの音色と、何ていうんでしょうね、その動きというか……それが、身体に、血管なのかどこかわからないんですけれど刺激が来るんです。以来、玉木さんのヴァイオリンがいいなってずっと思ってました。そのうちに、たまたま平形さん(『夢多き方へ』『第3の夢』プロデューサー)から、玉木さんが純正律音楽をなさってる事をきき、すぐ玉木さんの本を見せていただいて、駅の発車音の話にも共感して、『これはもう、絶対!』と思って今回のCDをお願いしたんです。できるだけ《愉快な骨》に刺激がいくような音を、ってね」
「ずっと“疲れをとる音楽”ということがやりたかったわけですが、ここでやっと到達したかなと思うんです。ただメロディがきれいなだけじゃなく、血液がきれいになったり炎症がおだやかになるような音楽というのはあるんだなと。私は純正律の説明はできないんですけれど、でも、純正律の音色って澄みきっているでしょ。これは感応ですから、澄んだ音色で澄んだ血液をつくるという形でいくのが一番人間にいいだろうと。血液がきれいになると同じ木の緑でも違う色に見えてくるんです」
「いま、街には騒音や過剰な音楽が入り乱れていてくつろいで買物もできない状態ですよね。それじゃ服を買いに行ってもキレイな色に見えないから、今日はいいや、ってことになる。逆に、ウキウキしていると、くすんだピンクが澄んだピンクに見えてくることもありますね。人間のこころと身体っていうのは影響しあう関係なんです。そして音楽もね。風の音も鳥の声も音楽と私はとらえています。ずっと、そういう身体に響く音楽が作りたくて、これまでに子供向けの曲も手掛けてきました。『第3の夢』で思ったものができたと思います」
☆音色で景気回復!?☆
「それは治療のように手を使うでもなくて、玉木さんが作曲してヴァイオリンを奏いて皆さんに聴かせることで、音楽――目に見えない、音から出る波動が人間の身体に影響を与えて、血液がきれいになったり、愉快な気持ちになったりするんじゃないかと。痛みが止まるっていうのは要するに、血液の濁りがとれるから楽になっていくのかなと。疲れも血液の濁りから起こるんだと私はみてましたのでね。だから、音楽という媒介によって、耳から聴いた音が脳の中に響き、背骨の中に響く。そうして背骨が刺激されるとその影響で血液がきれいになる、痛みがとれ愉快になる。明日もがんばろうって思える。みんながそう思えれば不景気の解消にだってつながるだろうと。“風が吹けば桶屋が儲かる”じゃないですけれど、そう考えたら面白いですよね。だから、皆さん、もっと自分の身体のことを知っていただくと、自分で自分の身体は治せるんだっていう自信がもっと持てると思うんです。元気でいられれば仕事もうまくいきますしね」
【つづく】
★陽幸堂――Tel. 03-3235-7535
東京都新宿区市ヶ谷本村町3-26ホワイトレジデンス9-B
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外科医のうたた寝☆その3
山田食堂の怪
福田六花(純正律音楽研究会発起人:医学博士、作曲家)
毎週月曜日は福島県のY町にある診療所で仕事をしている。小さな診療所であり、昼食は近所にたった一軒だけある〈山田食堂〉から出前をとって食べているのであるが、非常に不思議な食堂である。
基本的な味の組み立てはなかなか良く、特に手打ちうどんは絶品といっても差し支えないのだが、そのうどんは総じて太く、なかには親指ほどの太さのものもある。かつては適正な太さであったようだが、老主人の視力低下に伴い最近どんどん太くなっているようだ。
ある日、事務長は名物うどんを頼み僕はカツ丼を注文した。なかなか美味しいカツ丼を楽しんでいると、カツの下から太いうどんが1本出てきておおいにびっくりした。
ある夏の日、ワンタン麺が美味しいと云うので注文してみたら、麺の上に巨大なワンタンの皮だけが広がっており、ワンタンの中身が見当たらない。推薦してくれた看護婦さんに聞いたところ、先週食べた時は、ワンタンの中身は入っていたそうだ。忙しくて中身を詰めるのを忘れてしまったようだ。
寒い寒い冬の日のこと、午前中の往診を終えて診療所に戻り届いたばかりの鍋焼きうどんの蓋をあけたところ、立ち昇るはずの湯気はなく、鍋も冷えきって玉子も生のままであった。材料を鍋に入れただけで火に掛けるのを忘れてしまったようだ……。
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また月曜日がやってくる、我が愛すべき〈山田食堂〉はどんな昼食を運んでくるんだろう。
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――MALA PUNICA『H_las Avril ――Matteo da Perugia~Chansons~』
(WPCS-10669)――
黒木朋興氏が渡仏してしまったため、玉木×黒木の毒舌コンビによるおしゃべり形式はしばしお休み、ということで、今号は玉木氏による格調高い(!?)レビューをお届けしましょう。いずれ、ネットを介したチャット等で2人のおしゃべりが復活する可能性もありますが。
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今回は、古楽も古楽、マッテオ・ダ・ペルージャ(1390-1415)を紹介しよう。時代的には、日本で言えば戦国時代なのだろうか。そう思いつつこのCDを聴けば、彼我の違いに胸を打たれるものがあるはずである。
さて、私はほとんど古楽は聴かない。なぜなら、〈純正律=古楽〉というあまりにも硬直した図式がキライで、いくらもっともらしくても胡散臭いものを感じてしまうからである。特に、モーツァルト調律なんていってA=412にしてみたり、したり顔でヴェルグマイスターだのミーントーンだのと調律に拘ったフリをしても、中身が非音楽的だったら話にならない。
私は、それこそ純正律をライフワークにしてはいるが、あくまでも自分が作曲し演奏することが主眼であり、過去を振り返って、ああだったはずだ、いやこうだという議論のための議論は肌に合わないのである。
――と、言いつつも、実は時々は古楽のCDは聴いているし、やはりブリュッヘンのモーツァルトのレクィエムに感動したりはしているのである。
さて、今回はマッテオである。『H_las Avril』(「おお、四月」と邦訳されていた)と題されたCDは、MALA PUNICA(マーラ・プニカ)という、10人ぐらいのアンサンブルによって見事に色鮮やかな純正律の世界を繰り広げている。ソプラノ、カウンター・テナー、ヴィオール、リュート、管のアンサンブルは、よくハモったコーラスを前面に出すでもなく、バッハのような対位法で迫るわけでもないが、ノンビブラートでありながら、各ソロは際立った存在感を放って演奏している。
時代的にはルネサンス頃で、いわゆる転調というコンセプトはないが、経過音には随所に散見されるその音使いがまた見事に決まって、美しい装飾になっていえる。
マッテオはイタリア人だが、曲のほとんどはフランス語によるシャンソン(世俗歌のことをいう)らしい。
このCDは、ほとんどがソプラノまたはカウンター・テナーのソロ曲だが、途中に2曲ある器楽曲、これがまた素晴らしい。「14世紀頃になんという!」とびっくりするようなフレーズが随所にあり、もちろん、マーラ・プニカの演奏の実力の冴えにもよるだろうが、見事な純正律的色彩絵巻が聴ける。
このCDを聴く限り、「ここは協和的純正律」だの「ここはピタゴラス」だのとかの分析的受動態はすべて雲散霧消し、しばし天国的なやすらぎの世界に浸れる。
このテのCDは、理屈っぽいクラシック系のリスナーより、ロック系のリスナーの方が面白がるのではないだろうか。もっとも、そのテの人達によると、「あ、これは××××だ」とか、また、その世界特有の括り方の中にはまってしまうのかもしれないが…。
INFORMATION
マーラ・プニカ/MALA PUNICA
『H_las Avril ――Matteo da Perugia~Chansons (1390-1415)~』(WPCS-10669)/『600年前の異才~マッテオ・ダ・ペルージャ~フランス語の詩による歌曲集(1390-1415)』
→日本版は「ワーナー輸入盤」枠で取り扱われています。
CD番号は、ERATO CD/WPCS-10669(税込¥2,940)
仏語・英語による解説&歌詞と日本語による解説&訳詞つき。
輸入盤番号:8573-82163
→ちなみに、田村@事務局(民謡系)は1曲目冒頭のソプラノのコブシを聴いただけでやられました。これはハマります。アンサンブル名(柘榴の暗喩らしい)からしてクセ者って感じだし。必聴かと。
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アトマスキュア・コンサート
玉木宏樹のジャスト・チューニングの世界 II
「恋はマリオネット」の熱い夜
春まだ浅き3月12日(月)、「アトマスキュア・コンサート/玉木宏樹のジャスト・チューニングの世界Part II――恋はマリオネット」が、銀座ヤマハホールにて開催されました。これは、昨年7月の芝abc会館ホールに続き、峰咲マーユさんのところと純正律音楽研究会との共催、リズム時計工業(株)ほかの協賛によるもので、コンサートに先立つ3月7日にリリースされたミネラル・サウンドCD『光』『響』『時』発売を記念して開催されました。
朝がたには雪もちらつき、果たしてお客様にお越しいただけるのだろうかと出演者・スタッフ一同心細い思いで迎えた当日でしたが、その寒さにも関わらず大勢のお客様が開場時間前からお越しくださり、前回よりもさらに大きめ、500席の会場はほぼ満員となりました。
今回は、玉木宏樹氏の新曲発表をはじめ、水野佐知香&荒井章乃母娘のヴァイオリンデュオ、そして、スペシャルゲストに、今をときめく世紀のバンドネオン奏者・小松亮太氏をフィーチャーした「小松真知子とタンゴクリスタル」の皆さんを迎え、弦の響きとタンゴの出会いという、聴く側にとっても演奏者にとってもまったく新しい試みの、4部構成の異色のステージ(幕間には峰咲マーユさんの健康指導法コーナーもありました)が繰り広げられました。
ラストには、今回のコンサートのタイトルにもなった新曲「恋はマリオネット」のタンゴ・ヴァージョンを出演者全員でセッション。外の冷え込みを吹き飛ばすかのような華麗かつ熱いステージに、会場も盛り上がり、大盛況のうちに幕を閉じました。クラシック・ファンの方、タンゴのファンの方、それぞれに、日頃聴かない他のジャンルの魅力に開眼した一夜となったのではないでしょうか。次回もご期待ください。
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●玉木宏樹の純正律ミネラル・サウンドCD
『光』『響』『時』キングレコードより絶賛発売中!
玉木宏樹『第3の夢』――サウンド・テラピー
�これまでインディーズのみだった玉木宏樹のミネラル・サウンドが、メジャー・レーベルから発売されました。『光』(KICS 2344)は、玉木自身が選曲した「光の国へ」シリーズPart1~3のベスト盤。『響』(KICS 2345)は純正律によるカンテレ(フィンランドの民族楽器)やホーメイ(トゥバの倍音唱法)をフィーチャーリングした『響きの郷へ』を中心としたコンピレーションアルバム。『時』(KICS 2346)は、新曲の他、「第3の夢」やリズム時計に使用されているミネラル・サウンドも収録された玉木サウンドの新境地。定価は各2500円(税込み)。これら3枚のCDは、いずれも全国のCDショップでお求めいただけます。店頭にない場合、上記のCD番号を伝えれば取り寄せてもらえます。どうしても入手困難な場合は、純正律音楽研究会で承りますが、「ショップ取り寄せ」だと送料がかからないので、おすすめです。
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●玉木宏樹弦楽四重奏団のCD発売決定!
�かつて玉木宏樹弦楽四重奏団がコロムビアで録音した音源がCD化されることになりました。皆さんからのリクエストも多かった、NHKの「ラジオ深夜便」でよく放送されていた音楽の数々をまとめたもので、もちろん編曲も玉木氏によるもの。2001年7月発売予定です。同時に、弦楽四重奏の楽譜集も音楽之友社から刊行される予定ですので、弦カル・ファンの皆さん、お楽しみに。CD、楽譜集とも、発行日や価格等の詳細が分かり次第、お知らせします。
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@@@@@西麻布通信@@@@@
◆次回の「純正律ミニコンサート@コア石響」、一部で6月9日開催予定と告知されていましたが、事情により7月に延期となりました。
◆発売中のムック『ウルトラマンAGE』(辰巳出版)に、「怪奇大作戦」劇伴に関する玉木インタビューが掲載されています。最近「怪奇大作戦」「大江戸捜査網」等々の劇伴系玉木ワークスに焦点を当てた取材が増えており、単行本『怪奇大作戦大全』(双葉社より7月刊行)にも掲載予定。純正律関係では、『ショパン』(6月20日発売号)と『教育音楽』6月号(5月18日発売)から取材あり(教育音楽』では執筆もしています)。
◆玉木氏は現在、新作CD2~3枚(左記の弦カルとは別)制作に向けて鋭意邁進中。乞う御期待!
◆今年も玉木氏は、桐朋学園短大にて純正律の講座を担当中。今期の学生からも昨年に劣らぬすごい反響が起こっている模様です。
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〒〒〒〒〒〒おたよりお待ちしています!〒〒〒〒〒〒
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