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特定非営利活動法人 純正律音楽研究会 会報
『ひびきジャーナル』 【第10号】
2004年3月18日発行
編集/発行:特定非営利活動法人 純正律音楽研究会
〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2-1F
Tel. / Fax. 03-3407-3726
※(C)純正律音楽研究会 禁無断転載
転載等、二次的にご使用になる場合は、必ず事前に純正律音楽研究会
事務局まで御一報ください。
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<<今号の内容>>
■1■NPOになってのごあいさつ
■2■玉木宏樹の“この人と響きあう” 第10回
「からくり時計」誕生秘話を語ろう!
リズム時計工業株式会社綜合企画室参事 小俣藤郎さん
■3■ムッシュ黒木の純正律講座 第10時限目
続々・「本質」を求めて…… 黒木朋興
■4■《小特集 純正律の未知の可能性を求めて》
・老人と純正律 ―――――――医学博士、作曲家 福田六花
・純正律ミネラル・ミュージックの意外な効用
――――純正律音楽研究会正会員 長岡衛治
・ヘルスケア分野にも純正律ブームが到来!?
――――――――『壮快』編集部 鈴木雪子
・まとめ ――――純正律音楽研究会事務局 田村圭子
■5■天国的純正律音楽入門 第10回
純正律は理想的なヒーリングとなるか
NPO純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
■6■外科医のうたた寝☆その9 富士山を眺める日々
福田六花(NPO純正律音楽研究会理事:医学博士、作曲家)
■7■CD REVIEW [[[[[[[[[純正茶寮]]]]]]]]]] 玉木宏樹
The Hilliard Ensemble『JOSQUIN : MISSA HERCULES DUX
FERRARUAE』(Virgin/7243.5.62346.2.8)ほか
■8■西潟昭子が弾きうたう玉木宏樹邦楽器作品の数々
『いちめんの菜の花』CDリリース&発売記念コンサート開催のお知らせ
■9■純正律かわらばん
→玉木純正律の入門編CD『純正律への誘い』リリース、ほか
■10■西麻布通信
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■1■ NPOになってのごあいさつ
巻頭のごあいさつに代え、まずおわびの言葉を書かね
ばなりません。去年の10月25日、東京會舘にてNP
O化記念パーティをやって、いろんな方から多くの賛助
金を御寄付頂き、その御礼や、これからの抱負とか報告
を、早く会報を出して御理解を頂こうと思いつつ、諸般
の事情はあったとしても、ここまで会報の発行が遅くな
ったことを、おわび致します。
この間、何もしなかったわけではなく、NPO化記念
パーティの少し前に、健康雑誌『壮快』から、健康と純
正律の特集をしたいという企画を持ち寄られ、当会とし
ては、プレゼント用CDに対する音源提供とか、これま
での純正律ファン(?)の方々の御意見の反映とかで協
力し、12月に発売された『壮快』の記事はかなりのイ
ンパクトを各方面に与えたようです。この会報では、そ
の『壮快』の編集者の方による読者の反応等も書いて頂
いております。
その後、ドクター六花からの、アルツハイマー患者に
対する純正律CDの反応とかの面白い話もあり、そのあ
たりのこともドクターに書いて頂きました。
さて、NPO化にあたり、我々は、社会的貢献を第一
に考えて企画・立案を行なっていきます。その第一はア
ルツハイマー対策でもあり、それと並んで、全国の理学
療法室へ純正律CDを提供し、診療室内の音響空間の改
善をめざす運動です。これは既にドクター六花によって
実証済みなんですが、彼を通じて全国展開する為に、こ
のたび新たに、今までの純正律CDの中から、コンピレ
ーションCD『純正律への誘い』を制作しました。この
制作費は、賛助金と正会員の年会費から充当させて頂き
ました。遅ればせながら、御報告かたがた御礼申し上げ
ます。
今後の活動ですが、ホームページをはじめ、各種メデ
ィアを通じ、次のようなメッセージでキャンペーンして
いきます。
* * * * *
1)純正律とは何か
(初級、上級、MIDI対応)
2)純正律関係のCDや本の紹介
3)純正律とヒーリング(音楽療法的)の関係について
4)ミニコン、音程のワークショップ
5)合唱やブラスの人達との交流
6)純正律楽器の開発
7)騒音公害追放キャンペーン
8)上記に基づいたCD等の創作活動、その他
* * * * *
今後とも当会への御意見、御指導等、よろしくお願い
致します。
なお、当会のホームページを近々大幅に更新します。
手伝って頂ける方がいらっしゃったら御一報ください。
2004年3月吉日
特定非営利活動法人 純正律音楽研究会
代表 玉木宏樹
理事 小俣藤郎、西潟昭子
馬場英志、福田六花
顧問 太田武志、黒木朋興
#
■2■ 玉木宏樹の“この人と響きあう” 第10回――
「からくり時計」誕生秘話を語ろう!
リズム時計工業株式会社 綜合企画室参事 小俣藤郎さん
#
ミネラルサウンドクロックの開発者であり当
研究会が発足する以前からお付き合いのある
工業デザイナー小俣藤郎さんの登場です。玉
木氏とのコラボレーションによって時計を通
じた純正律の普及に邁進されてきた小俣さん
は当NPOの理事でもあります。以下の対談
は昨秋、純正律音楽研究会のNPO化認可直
後、10月25日の東京會舘でのお披露目パ
ーティを目前に控えアルキ(玉木事務所)に
て行なわれたものです。
―― ―― ―― ―― ――
小俣:しばらくです。
玉木:こちらこそ。いよいよNPOが発足するし、パーティなんか
もよろしく。
小俣:はい。で、今日はミネラルサウンドクロック【註1】の新し
い展開とか、使う楽器の打ち合わせとかで参りました。
玉木:その打ち合わせは後ほどきくとして、今日は丁度いいチャン
スだから、新生NPO化の会報の対談としてのお話とか。
小俣:何をしゃべりますか。
◆理解者求めて東奔西走の日々◆
玉木:皆さんは、リズム時計と純正律の結び付きとか、私と小俣さ
んとの付き合いとか、あまり御存知ない人が多いと思うので、その
辺の話から。小俣さんと付き合いだしてどの位になるかなあ。
小俣:かれこれ6~7年前くらいですかね、最初は。
玉木:そうそう、この狭くて汚い事務所に、物凄い人達が来て、大
変だった。
小俣:「ドンタタ君」。
玉木:そう。あの小さな人形がケナゲにドラムを叩く、CD+MI
DI【註2】のデモンストレーションでしたね。ビクターの飛河さ
んから預かってね。
小俣:飛河さんからこの間連絡があって、ビクターから独立したよ
うです。
玉木:そう……。あの時は本当に大変だった。時間を区切って、60
人くらいに見てもらって、この事務所はグチョグチョ。でも、あの
時、一番最初に時間前に来て、ずっとデモを見ていたのが、小俣さ
んと上司の永井さん。
小俣:そうでしたね。
玉木:あれからいろんな会社やプランナーからも話が来たんだけど、
小俣さんたちの情熱と、私がやりたかったことが合致して、話はト
ントン拍子に行くかと思ったんだけど。
小俣:時間がかかりましたね。一時はあきらめかけた時もあったけ
ど。からくり時計の人形が実機打ち(調律された棒鈴を実際に人形
が打つ)をやる夢にうってつけだったんだけど、まあ、方法論とし
ては、CD+MIDIだけじゃなくでもよかった所もあるんですが、
特に音楽面で、玉木さんの、「どうせオルゴールの実機打ちのよう
にするんだったら、調律は絶対に純正律にしてほしい」という話が
頭に残りましてね。純正律って一体何のこっちゃと。
玉木:まだ私もCBSソニーから日本で初めての純正律CDを出し
たばかりで、話の分ってくれる人を探すのに必死だった。
小俣:CDをお借りして、最後の方に、純正律と平均律の比較の所
があって、何度も聴いて、違いは分ってもそれがどんなにいいのか
どうか分らない。で、ウチへCD持って帰って、ウチの坊主に聴か
せてみたら、上の子は「違いは分るけど」というだけで反応が鈍い。
それで下の坊主(当時小学校1年生)に聴かせたら、一発で「純正
律のほうがいい」と。どうしてだときくと、「だって、平均律は音
が乱暴だけど、純正律はやさしいもん」ってね。これは間違いない
と思いましたね。
玉木:絶対に、小さい子の方が反応すると思う。大人になればなる
ほど、「違いは分るけど、それがどうした?」だから。私の周りも
みんなそうです。で、赤ちゃん研究のピジョンの石川さんなんて、
絶対に赤ん坊に聴かせたいと言ってくれてるし。
小俣:それで、純正律のことを〈ミネラルサウンド・シリーズ〉と
名付けて、「からくり時計」が始まった。
◆国際級のネーミングセンス◆
玉木:その話で面白いことがあったね。我々は純正律のことを〈ミ
ネラル・ミュージック〉と名付けて商標登録しようとして、リズム
時計のアメリカ支社にきいたら、「英語として適当ではない」と言
われて躊躇した。そしたら、その後かな、実はカナダで商標登録さ
れていると知ってガックリ。アメリカ支社の誰かが、抜け駆けでや
ったんじゃないの。
小俣:さあ……(苦笑)。
玉木:まあ、いろいろあったけど、〈ミネラルサウンド〉のデモと
しては、CD+MIDIを生かすためにも、CD音源をゴージャス
にする為に、イギリスへ行き、ロンドン・フィル・メンバーでカラ
オケを録音してきた。
小俣:小川さん(当時の純正律音楽研究会のプロデューサー)が頑
張ったもんねえ。
玉木:そして、そのCDに完全にシンクロして、人形がメロディを
実機演奏するという、なんとも贅沢な。
小俣:その調律が純正律で。
玉木:厳密にはそうじゃなくて、一番それに近いミーントーン(中
全音律)という調律。
小俣:細かい振動数の表を持たされてね。棒鈴の調律の歩留まりが
大変だった。
玉木:1号機が完成する前後だったよね。僕の『音の後進国日本』
という本が、ちょっとした話題になって、ひとつはJR中央線の自
殺問題、もうひとつが純正律で、これは読売が大きく採り上げてく
れた。それに触発されたNHKが「おはよう日本列島」っていうん
だっけ、朝の5分間だけ、リズム時計のショウルームから全国放送
してくれたりして。
小俣:すごく大変なことだったのに、社内はあまり話題にしないの
ね。「リズム」という音楽用語が会社名になっているのに、音楽に
関心があるんだかないんだか。
玉木:小俣さんのしゃべり、結構、格好良かったよ。それから、音
楽スタートのリモコン持っていた青年があがちゃって。
小俣:そうそう彼、もう辞めちゃったけど。
玉木:あれが原因かな(大笑い)。あの番組見た人からの反応はど
うでした。
◆ツウなお客様にタジタジ◆
小俣:いやあ、高知だったかな、すごいおばさんから、「テレビ見
て、すぐに買いたい」というビックリするような話がきたりとか。
あのあと、ショウルームにも何人かお客さんが来て、ある女の人が、
「この棒鈴の調律、純正律じゃないでしょ」って言われて、「はあ、
ミーントーンですが」と言うと納得して帰っていった。
玉木:世の中には恐ろしい人もいるもんだ。でも、あの時のNHK
というインパクトがなかったら、〈ミネラルサウンド〉はなくなっ
ていたかもしれない。で、定価は高い(150万円、ホールタイプ
は180万円)けど、何台くらい売れたの?
小俣:120台くらい。
玉木:それはすごい。儲かったんじゃないの。
小俣:いやあ、開発の期間とコスト考えると全然ですよ。
玉木:で、純正律としての評判はどうだったの?
小俣:顧客には耳の良い人がたくさんいて、まず聴いてもらうと納
得する人は多い。「ほんと、いい音ですね」と。「実音演奏ですか
ら、ミーントーンですから」と話をすると、たいてい分ってくれる。
ただ、顧客に対し、私のレベルも低いし、中間を取り持つ営業にそ
んな文化的なことは期待出来ない。
玉木:そうそう、それで思い出したけど、さる宗教団体から特注の
仕事があって、僕も何曲かそれ用に編曲したことがありましたね。
あの時、営業の人から……
小俣:「先方は芸大を受けようと思ったくらい音楽に強いので、何
も説明しないように」ってね。
玉木:小俣さんだって、メカの説明はしたいだろうし、僕は先方が
分ってるとしても、純正律の話くらいしたい。
小俣:しかし会ってみると、その人は純正律のことを詳しく知りた
くて、ニコニコしながらいろんな質問をしてくれましたね。
玉木:どうも、トランペットをやっていて、かなりいい所まで行っ
たということじゃなかったかな。ああいう風に、すごくまともに突
っ込んでくれる人は有り難いね。で、今までの問題点とか、これか
らとか……これからって、あるんでしょうね。
小俣:もちろんですよ。今までのは、音の高さを安定的な売りにす
るには、メカの不良が多くて、その点、今は不良も出尽くしたし、
発音体の工夫とか、バックオケの聞かせ方とか、工夫をこらしてい
ますので、いいものができます。
玉木:じゃ、そろそろ打ち合わせしますか。
***************
ということで、この後の細かい打ち合わせ
内容は省略します。今年のなるべく早い時期
に、新商品のラインナップが揃うことを目標
に、作業を続けています。
***************
【註1】からくり人形が実機打ちをする実機の調律を含め、「純正
律音楽時計=ミネラルサウンドクロック」とリズム時計工業が命名
した。
【註2】ビクター開発の技術で、通常のCD音源にサブコードとし
てMIDI情報をシンクさせて同居させる。そのことにより、オケ
の演奏に合わせ、MIDI情報が外部に信号を出し、ドラム、照明、
噴水等の同時演奏が出来るシステム。そのデモとして、ドラム人形
「ドンタタ君」が登場した。ミネラルサウンド・シリーズのからく
り時計はMIDIによって、実機打ちをシンクロ化させている。
===============
《インフォメーション》
「ミネラルサウンドクロック」の製造・発売元はリズム時計工業株
式会社になります。
☆リズム時計工業のホームページ
http://www.rhythm.co.jp/
――「ミネラルサウンドクロック」の響きも試聴できます。
☆ミネラルサウンドクロックお問い合わせ先
リズム時計工業株式会社
本社ショールーム
〒330-9551
埼玉県さいたま市大宮区北袋町1-299-12
Tel. 048-643-7241
総合企画室/中山
――「ミネラルサウンドクロック」の「掛けタイプ」をご覧いただ
けます。
☆東京店ショールーム
〒110-0005
東京都台東区上野6-16-22
上野TGビル5F
Tel. 03-5807-7811
――「ミネラルサウンドクロック」の「ホールクロックタイプ」を
ご覧いただけます。
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■3■ ムッシュ黒木の純正律講座 第9時限目
続々・「本質」を求めて…… 黒木朋興
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「本質」と「実存」の話を続けます。
◆ミーメーシスからモダンへ◆
「本質」の探求とは「あの世」と「この世」を「=」で繋いでいく
ことなのに対し、「実存」のほうは「いまここにある」物事だけに
焦点をあて、この「ある」ということがどういうことかを分析して
いくことだ、ということは前回見たとおりです。
「『実存』は『本質』に先行する」。言わずと知れたサルトルの有
名な台詞です。実存主義が流行った時代には、様々な解釈が試みら
れ、それぞれがそれぞれの思いをこのフレーズに投影していったよ
うではありますが(それが必ずしも悪いことではないと思います)、
今まで述べてきた「本質」と「実存」の話にこの台詞をおいてみれ
ば、サルトルの真意が何とはなしに見えてくるでしょう。つまり、
「神」を中心に据えた思想体系への彼特有の反抗の念がこの台詞に
は込められている、ということです。
「神」の国にある筈の理路整然とした美しい「真理」、あるいは、
「あの世」を持ち出すのがいかがわしいというのなら今ここ目の前
にはないけれどどこかには必ずあるだろう完璧な「美」、これらを
模倣しようというのがミーメーシスの原理であるということは前々
回見た通りです。モダン以前における芸術の役割とはまさにこの
「理想」をこの世の人々に提示することであった、ということも良
いでしょう。そして、この「理想」と「現実」の従属関係を断ち切
り、ひたすら今ここ目の前にある物質に焦点を当て、そのある姿を
分析していくのが実存主義ということになります。また、理想の美
を目指すのではなく、自らの感性を便りにこれらの物質を組み合わ
せ作品を創っていこうというのが19世紀末フランス象徴主義以降
のモダン芸術のあり方でもあるわけです。
ただし気を付けておきたいのは、このようなミーメーシスの原理
を超克しようとする発想は、実のところ、18世紀末から19世紀
初頭にかけて初期ドイツロマン主義者達の間で夢見られたというこ
とです(もちろんこの発想の源流はフランス18世紀ルソーや17
世紀のボワローまで溯ることも可能でしょうが)。彼等は当時盛ん
に作曲された交響曲の響きにその夢を投影します。あるいは彼等の
理論は純粋器楽作品の開花という実際の現象に支えられている、と
も言えるでしょう。当然、ここで俎上に上がっているのは、「絶対
音楽の理念」のことです。「絶対音楽」とか「純音楽」とかいうと、
人それぞれにいろいろと思うところもあるでしょうし、実際いろん
な解釈が可能だとは思いますが、最も重要なのは、この理念が芸術
をミーメーシスの原理から切り離し解放しようとした、ということ
です。こう書くと何やら難しそうですが、何のことはない、音を
「神」、宇宙、真理や感情など他の概念の比喩・暗喩として捉える
のではなく、音を音として、モノをモノとして扱う、ということで
す。僕らのようにキリスト教徒でないものから見れば当たり前に思
えることですが、長い間西洋キリスト教の世界では、芸術の役割と
は真理の模倣(ミーメーシス)であり、このことが彼等の文化の強
力な特徴をなしてきたということを再度確認しておきましょう。
◆絶対音楽とは◆
ここで「絶対音楽」の唱道者として名高いハンスリックの一節を
引用してみたいと思います。
「一枚の歴史画においてあらゆる赤が喜びを意味したり、あらゆる
白が潔白を意味するとは限らぬと同様。一つの交響曲においてすべ
ての変イ長調が熱中的気分を、すべてのロ短調が厭人的な気分をよ
び起こすというわけではない。あらゆる三和音が満足をあらゆる減
七和音が絶望をよび起こすというわけではない」(『音楽美論』、
渡辺護訳、pp.42-3.)
例えば「メジャーキーは〈楽しい感じ〉、マイナーキーは〈悲し
い感じ〉がするという意見があるが、どうかと思う。メジャーキー
はメジャーキーを、マイナーキーはマイナーキーを表現しているだ
けなんだ」と言う人がいますが、つまり、このような見解はまさに
「絶対音楽」の延長線上にあるものだと言えるのです。もちろんこ
こでは、この見解が当たっているか、間違っているかということを
問題にしているわけではないということを言い添えておきます。
#
■4■《小特集 純正律の未知の可能性を求めて》
#
ちかごろ純正律が、玉木氏をはじめ当研究会
でも予想していなかった意外な方面から脚光
を浴びたり役立ったりしているというお話が
増えてきているようです。そこで、今号では
小特集として、純正律の新たな可能性を示唆
する最近の事例をいくつか御紹介させて頂こ
うと思います。
◇◇老人と純正律◇◇
―――――――医学博士、作曲家 福田六花
10年ほど前に、純正律で演奏された音楽を聴いている最中の脳
波を測定するという実験を行った。純正律を聴くとα波を中心とし
た安らぎの脳波を多く認めると云う結果が得られたので、それ以降
病院内の様々な場所で純正律を流すことを試みてきた。待合室、理
学療法室、内視鏡検査室などで患者さんの緊張を和らげる効果が認
められてきた。
私は元来外科医であったが思うところがあり、二年前より老人保
健施設で老人介護の仕事に従事している。老人保健施設とは自分の
家で生活することが難しくなってきた高齢者の方に、一定期間入所
していただいてリハビリを重点的に行い、再び自宅で生活してもら
うことを目標とした施設である。入所されている方には概ね2通り
のタイプがある。ひとつは脳梗塞、パーキンソン病などの病気で肢
体不自由となり、寝たきりであったり、車椅子での生活を強いられ
るようになってしまった方々。もうひとつは身体能力はある程度維
持されているが痴呆が進行して、社会生活が営めなくなってしまっ
た方々である。私の施設の2階は痴呆専門棟であり、40名の重度
痴呆の方が入所されている。なるべく自由に家庭的な雰囲気で過ご
してもらうために四季折々の行事や様々なレクリエーションを行い、
少々ならお酒も飲んでもらっている。
○それでも徘徊の悩みは尽きず
痴呆の介護で非常に問題になってくることのひとつに徘徊がある。
何かを探してあちこち歩き回るのであるが、自宅にいると外に出て
道に迷ってしまったり、交通事故に遭遇したりと危険極まりないこ
とも多い。家族はお爺ちゃんやお婆ちゃんが外に出ないようにいつ
も見張っていなければならず、夜もおちおち眠ってはいられない。
思い余って病院に相談すれば、睡眠薬など処方されて強制的に寝か
し付けられてしまったりする始末である。そんなことが続けば痴呆
は更に進行し、ストレスも貯まる一方である。
老人保健施設では鍵の掛かった限られた範囲ではあるが、極力自
由に歩き回ってもらっている。建物も徘徊しやすいように回廊形式
で、その真ん中に職員ステーションがあり徘徊している老人を常時
見守れるようになっている。自由に歩き回ってもらうと、ある程度
落ち着いたりもするのだがそれでも徘徊はなくならない。恐いのは
夜である。限られた人数の夜勤職員で頑張って見守ってはいるのだ
が、徘徊につきものの転倒は時に重篤な合併症を引き起こすことが
ある。全員が夜九時になればぐっすり休んでくれればどれだけ助か
るか……。
○純正律で徘徊が減った!
昨年11月、玉木さんがヴァイオリンを持って老人保健施設にや
ってきてくれた。入所者全員の前で約1時間のヴァイオリンコンサ
ートを行って頂いたのだが、びっくりしたことに普段落ち着きのな
い痴呆の方の多くが、最後まで椅子に座ってじっと聴き入っていた。
その姿に感銘を受けた職員の若者達が、翌日からさっそく痴呆専門
棟で純正律のCDをかけ始めた。お茶の時間と夕食のあとにフロア
全体で流している。純正律が流れる中で穏やかな表情の痴呆老人達。
なんと落ち着いたいい風景である。それ以前は演歌、民謡、そして
カラオケが鳴り響いていることが多かったのだが……。
純正律を流すようになって驚いた!! 夜の徘徊が大幅に減り、み
なさんしっかり休んでくれるようになった。いつも機嫌の悪いお婆
さん、怒ってばかりのお爺さん達も少し穏やかになったようである。
そして働いている我々も癒されている。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
◇◇純正律ミネラル・ミュージックの意外な効用◇◇
――純正律音楽研究会正会員 長岡衛治
まだまだ一般には知名度の低い純正律音楽を、健康情報誌をとお
して、これまでこの種の音楽とは直接つながりのなかった層にまで
浸透させるのは、とても賢明な方法と言えそうです。
バレエ教室を主宰している私の妻は、昨年暮れ『壮快』2月号発
売の新聞広告「本当のドミソ・純正律……」を見たことから、たま
たま私が持っていたCD『光の国へ』を初めてじっくり聴く機会を
得ました。そしてそれを彼女のバレエ教室のひとつ、成人を対象と
した「バレエ美容体操」教室で、柔軟体操をするときのBGMとし
て使ってみたのです。この教室はバレエの基礎にそって楽しく体を
動かしながら、美しく健康的な心と体を維持していこうという大人
のバレエ教室で、生徒は主に50代60代のお姉さま方です。
ここでBGMとして使ったのは『光の国へ』(part1)だったので
すが、その注目すべき結果をメンバーの感想もまじえながら以下に
列挙してみましょう。
* * * * *
☆Aさん66歳は、腰を曲げても膝に頭がつかなかっ
たが、この音楽を聞きながらやっているうちに自然
に頭がつくようになった。また今まで脚が曲がりに
くくて椅子に座るしかなかったが、あぐらもかける
ようになった。
→この指導をしている妻も1年前バイクの事故で骨折
し、思うように脚が上がらなかったがこの音楽を聞
きながらやっている内に脚がバーまで上げられるよ
うになり、正座もできるようになった。
☆Bさんはミネラルミュージックを聞いた感想を、
「懐かしいような感じで、心地よく長時間聞いてい
ても疲れたり厭になったりしない。自然に体の中に
音が沁みこんでくる。」と言っている。
☆94歳になるBさんの母親は音楽を聞きながら好き
な編物をよくする。普段は編み目を飛ばしたり不ぞ
ろいになるのはしょっちゅうだったが、その後この
CDを聞きながら編んだものは目がきちんと揃って
きれいに編めている。それに今までの音楽ではわり
と簡単に飽きてしまったり、うるさいと言って止め
たり変えたりすることも多かったが、ミネラルミュ
ージックはずっと鳴らしていても厭にならないらしい。
* * * * *
以上がこのバレエ教室での反応です。ミネラルミュージックは何
故か体の中まで音が沁みこんできて、意外な作用をするもののよう
です。
私は最近、あるソプラノのオペラ歌手が「蝶々夫人」の中で歌っ
ているアリアの音声を波形分析してみて、ビブラートの幅が長3度
を超えているのには驚きました。倍音にも当然同じ幅のビブラート
がかかっているわけで、オーケストラが加われば立派な不純正律音
楽! こんな音楽を聴いてぐったり疲れた後もミネラルミュージッ
クは私達にやすらぎを与えてくれる素晴らしい音楽なのです。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
◇◇ヘルスケア分野にも純正律ブームが到来!?◇◇
――『壮快』編集部 鈴木雪子
――昨年暮に発売された健康雑誌『壮快』で
純正律特集が組まれたところ大反響。当研究
会事務局にも読者からのお問い合せや純正律
CDの御注文が数多く寄せられ、健康に悩み
を持つ方が純正律に寄せる関心の高さが伺わ
れまた。その『壮快』編集部・鈴木さんから
のレポートです。
弊誌『壮快』2004年2月号で「純正律」特集を行うことにな
ったのは、インターネットで玉木先生のホームページを拝見したの
がきっかけです。純正律音楽を聴いて体調が改善した人が多数いる
という内容に興味をそそられ、また実際に純正律と平均律のドミソ
を聴き比べてその違いに驚き、玉木先生にご連絡させていただきま
した。
特集中では、純正律そのものの説明のほか、純正律音楽を聴いて
・高かった血圧が正常化し耳鳴りが消えた
・耳鳴りが気にならなくなり不眠症が解消した
・パニック発作が治まり不眠症が解消した
・痛みと心痛が和らいで熟睡できた
という4人の方の体験記を詳しく紹介。また、医学博士の福田六花
先生が行われた実験(純正律音楽と平均律音楽を聴いたときの脳波
の変化を測定し、純正律音楽により高いリラックス効果を確認)を、
福田先生ご本人にわかりやすくご解説いただきました。さらに、純
正律CDの応募者全員プレゼントを実施したのですが、その結果……。
編集部の予想をはるかに上回るご応募が殺到し、CDの発送が大幅
に遅れる事態となってしまいました。読者の方々にご迷惑をおかけ
したことを深く反省するとともに、純正律に対する関心の高さ、ま
た期待の大きさを痛感した次第です。
現在、全員プレゼントの純正律CDを聴いた読者の方々より、編
集部にさまざまな感想が寄せられている最中です。具体的には「ど
うしたわけか、涙が出てきました。とにかく気持ちが楽になります」
(大阪市・女性)「毎日3回も4回も聴いております」(福岡市・
男性)「バイオリンの音が胡弓のようで驚きました」(女性)等々。
また、「純正律音楽のCDは市販されているのか」というお問い
合わせや、「既存の楽器を調律して、正確に純正律を出すことは可
能ですか?」といった具体的な質問も届いています。
純正律音楽が「効く」メカニズムはまだ解明されていませんが、
実際にたくさんの方の症状が解消、または軽減していることは紛れ
もない事実です。今後も、健康雑誌ならではの立場から、純正律の
効果・効能に迫っていきたいと考えています。玉木先生、今後とも
どうぞよろしくお願いいたします。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
◇◇研究会からひとこと……◇◇
純正律によって痴呆の方の徘徊が落ち着いたというドクター六花
氏のリポートは、介護に悩む方々にとっても福音となりそうですね。
ドクター六花氏は近々、この痴呆症と純正律音楽に関する研究成果
を学会で発表されるとのことです。
また、『壮快』の記事を見て当研究会で直接CDをお求めくださ
った方々からは、「耳鳴りや不眠が解消した、何軒もの病院を回っ
ても治らなかった膝痛が消えた」といったお声が、今でも当研究会
にも寄せられています。
私事ですが以前、神経生理学等をベースに開発された身体の柔軟
性や運動能力の向上を目指すワークショップを体験した事がありま
す。そのメソッドでは、プラクティショナーの言葉によって身体動
作を導き、身体各部の存在を意識させ神経系統の活性化を促し、全
身を緩ませます。すると、それまでうまくつながっていなかった神
経の回路が通じるのか(?)、受講前には動かせなかった箇所が動
いたり可動域が増えたりするようになるというものです(とても乱
暴で不正確な説明かとは思いますが)。実際に、発声についてのコ
ースを受講したところ、受講直後に自分の声が全く違って響くよう
になり、驚きました。長岡さんのリポートを拝見して、まず、この
体験を思い出した次第です。
耳から入ってくる言葉の刺激で中枢神経の隠されたパワーを引き
出すことが可能であるなら、聴く人の身体にスーッと無理なく浸透
していく純正律の響きも、さらに興味深い何らかの作用を見せるの
ではないかと。もちろん、言葉と音楽とを同じにとらえることはで
きませんが、純正律にはさらに人間の中枢神経の秘められた力を引
きだすパワーがあるような気がしてなりません。その未知の可能性
を、是非とも専門の方々に解明していただけたらと願っています。
〈純正律音楽研究会事務局:田村圭子〉
【『ひびきジャーナル第10号』ネット版(2)に続く】
【『ひびきジャーナル第10号』ネット版(1)から続く】
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■5■ 天国的純正律音楽入門 第10回
純正律は理想的なヒーリングとなるか
NPO純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
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いま、健康雑誌『壮快』で純正律が紹介されて以来、一部で話題
になっているようだ。しかし、はじめにお断りしておくけど、私は
ヒーリングとして純正律を始めたのではない。行き詰まって混迷し
ている現代音楽に対するアンチテーゼなんていう、偉そうな気負い
はあったとしても。
しかし、1994年、CBSソニーから日本で初めて「純正律」
を意識したCDを出す時、その透明な響きを新しい方法と位置づけ
ることになり、その名も『純正律による理想的ストレス解消』なん
ていう、摩訶不思議なタイトルのCDが出た。私自身、平均律の濁
った「ドミソ」よりは、透明で美しい純正律の「ドミソ」の方が耳
に優しいはずだという自信はあったので、どちらかといえば消極的
に、ヒーリングかも知れない、とは思っていた。その時、音と身体
の根源的問題でもあるので、CD監修に参加してもらった医師のひ
とりが、今や「シンガーソング・ドクター」としても認知されつつ
ある当研究会理事のドクター六花氏である。
◎眠くなるのはいい反応◎
ソニーのCDは当初、よく寝られるとの反応が多く、私は非常に
落胆した。不眠症用の子守唄のCDを作ったつもりは一切なくて、
2~3曲で寝てしまうという反応には、「最後まで聴かんかい!」
と腹を立てたりした。「それはいい反応だ」とドクターから言われ
ても、私は半信半疑だった。そのうちドクターから、「茨城県や長
野県の病院附属の理学療法室で純正律CDがめざましい効果をあげ
ていて、早く2枚目が欲しいと言われている」と言われつつも、実
際に生楽器で純正律演奏することの難しさを実感していた為、シン
セで純正律演奏ができる工夫にメドがついて、やっとインディーズ
でCD化したのが『光の国へ』シリーズ。永六輔さんのラジオでの
紹介で火がつき、今まで約10タイトル前後のCDを作ってきた。
そうしたCDを聴いた人の反応は凄まじく、「頭痛が治った」
「不眠症が軽減した」「ペットがおとなしくなった」等々、ホント
かいな? と半信半疑の中で、一番すごい反応が、舌ガンで苦しん
でおられた作詞家の増永直子さんの「痛みが消えた」という喜びの
声だった。それを機に、CDを聴いてくれた人へのアンケート葉書
を出したところ、驚くような反応をたくさん頂いた。
昨年、当研究会のNPO化記念パーティをやる直前に、『壮快』
が、「ぜひ、純正律音楽と健康についての特集をやりたい」とのこ
とで打ちあわせを重ね、過去のアンケート葉書が非常に役に立ち、
2月号の誌面では「純正律で耳鳴りが解消した」とか「痛みがとれ
た」等々という、使用前・使用後のような体験談を寄せて頂いたの
は、すべてアンケートに回答してくれた人たちだった。
『壮快』読者からのCD注文も多く、既にCDを聴いた人からのリ
ピート注文や、友人にプレゼントしたいという注文もチラホラ。こ
ういう反応の中でも最も新鮮だったのは、当会の正会員でもある長
岡さんの奥さんがやられているバレエ教室での反応だった。これに
ついては長岡さんから一文を頂いているので、ぜひお読み頂きたい。
◎またしても新たな可能性が◎
こういう流れの中で、2月にドクター六花氏が施設長をしている
河口湖の老健ホームで、永六輔さんのボランティアに同行し、夜の
会食の席上、またまた驚くべき話をきいた。その施設にはアルツハ
イマー患者用のフロアがあり、そこでずっと純正律のCDをかけた
所、すごい効果がある、曰く、徘徊の数がめっきり減り、おとなし
く休む人もいるとのことで、ドクターはこのことを近く学会で報告
するとのこと。
日本での音楽療法の主流が、高血圧の人にはバッハの「ブランデ
ンブルグの第5」なんていう、とても我慢できない選曲中心なので、
そういう風潮に一矢報いるにはいいかな、と思っている。
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■6■ 外科医のうたた寝☆その9 富士山を眺める日々
福田六花(NPO純正律音楽研究会理事:医学博士、作曲家)
河口湖にやってきてもうすぐ2年になろうとしている。以前から
湖畔の生活に憧れてはいたが、富士山に対してはなんの感情も持っ
てはいなかった。けれども河口湖にいると富士山から逃れることは
決して出来ない。どこに居ても視界の一角に巨大な富士山が入って
くる。ようするに富士山の麓でウロウロしている毎日である。
住んでいる部屋からは真っ正面に富士山が見え、風呂場の窓にも
富士山が鎮座している。仕事場である老人保健施設の建物も富士山
を眺める構造になっている。
否が応でも毎日眺めていると不思議なことにだんだんと親しみが
湧いてきた。金曜日に東京で仕事があるので週末は東京で過ごすこ
とがあるが、その帰り中央高速をクルマで走りながら富士山が見え
てくるとほっとした気持ちになる。
★至高の富士とは!?★
富士山はどこから眺めると一番きれいか? 富士山マニアの間で
は様々な意見や議論がある。またたくさんのビューポイントが存在
しているが、以前はそんなことは全く気にしていなかった……。そ
んなある日のことである。僕の所属している医療法人は御殿場に本
拠地の病院があるために、時々御殿場に行くことがあるのだが、そ
こから見上げる静岡県側の富士山は、普段眺めている山梨県側の富
士山とまるで違った表情をしていることに気付いてびっくりした。
同じ富士山のはずなのに……。それからようやく富士山の眺めが気
になるようになってきた。山中湖で観た富士山に沈む夕陽、本栖湖
で観た富士山と夜明け(5000円札の絵になっているポイント)、
十二ヶ岳と云う山からは富士五湖と青木ヶ原の樹海を従えた堂々と
した姿、どれもが感動的に立派である。冬になると満月の夜、闇に
浮び上がる雪を被った真っ白い富士山は、神秘的ですらある。
どれが一番だろうか……。僕にとっては自分の部屋と仕事場から
みる富士山が一番である。ようするに普段見慣れた富士山が一番し
っくりくる。
★富士山の表はどちら?★
山梨県民と静岡県民は仲が悪いと云われている。両方の県で仕事
をしていると確かにそうだと思うことが時々ある。山梨は静岡を悪
く云い、静岡は山梨を悪く云う場面は時々見かける。この不仲は戦
国時代から続いているようだ。むかし駿河の国の今川義元は甲斐の
国の武田信玄に「武田殿、甲斐の国から眺める裏冨士の風情は如何
……」と言って馬鹿にしたそうである。富士山をめぐってどっちが
表でどっちが裏か、この論争は400年以上前から続いているよう
で面白い。
* * * * * * * * * *
現在は積極的に富士山に関わるようにしている。日課のジョギン
グで富士山に走りに行ったり、マウンテンバイクで樹海を走ったり、
夏の終わりには2シーズン続けて登頂した。希望される方は御案内
しますよ。
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CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW
■7■ 純正茶寮 玉木宏樹
The Hilliard Ensemble
『JOSQUIN : MISSA HERCULES DUX FERRARUAE』
(Virgin/7243.5.62346.2.8) ほか
今回は、古楽と現代音楽という純正律の多様
性を感じさせるセレクトでお届けしましょう。
玉木氏の担当で御紹介していきます。
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純正律音楽というジャンルの中では、年代的にも内容的にも、あ
まりにもかけ離れたふたりの作曲家のCDを紹介しよう。
1人目は、ジョスカン・デ・プレである。ジョスカン(c1450
~1521)は、15~16世紀に於ける伝説的な作曲家。フラン
ドル派の巨匠といわれており、当時の音楽界にはあまりにも大きな
影響を与えた人ということになっているが、名声ぶりだけがひとり
歩きしている感もあり、ジョスカンは実は3人いた、とかいまだに
分らないことが多い。ただし、純正律のハモり感が、イギリスから
伝わってきて、それを物の見事に消化した作風はあまりにも有名で、
特に、ア・カペラ(無伴奏合唱)曲は定評がある。このジョスカン
のア・カペラ合唱曲を見事に再現したCDが出た。イギリスの有名
な男声コーラス、ヒリヤード・アンサンブルによる
『MISSA HERACULES DUX FERRARIAE』
だ。私はこのCD、眠る前にかけてよく聴くが、まだ最後まで到達
したことは一度もない。必ず途中で熟睡し、目が覚めるとCDは終
っている。
* * * * *
もう1人は、現代のバリバリの鬼才、ジョン・ケージ(1912
~1992)である。いまさらジョン・ケージの奇行振りを説明す
るまでもあるまい。私は学生時代、J・ケージのコンサートへ行っ
て大騒ぎをしたこともあり、彼のハプニング性は、イベントとして
は面白いとしても「音楽」とは違うと思っていた。また、私の若い
頃は、いわゆる現代音楽と称して、頭の悪い作曲家まがいが、ピア
ノの中に鉛筆や消しゴム、洗濯バサミ等という異物を挿入して、訳
のわからん雑音をまき散らす、プリペアド・ピアノ奏法というもの
が流行っており、私は心底バカにしきっていたので、現代音楽展と
いうチラシの中に、プリペアド・ピアノなどという文言があろうも
のなら即、ハナカミ扱いだった。そういう偏見(?)はつい最近ま
で続き、NAXOSレーベルが、強力廉価版の中にJ・ケージを入れて
いなかったら、私は死ぬまでJ・ケージの良さを知らなかったこと
だろう。
『プリペアド・ピアノのためのソナタとインタリュード』は、なん
と、1946年前後の作曲だが、書かれた年代はともかく、その醸
し出すサウンドの何と神秘的なことか! ピアノの中の異物はしか
し、計算し尽くされたかのような倍音を発し、1台のピアノに対す
る何人かの楽器奏者が共演しているかのような世界を生み出してい
る。私は、自分の迂闊を大いに恥じたい。J・ケージはやはり、た
だならぬ人だ。
当CDレヴューで交互に情報を書いてくれている黒木氏によると、
J・ケージは、師のシェーンベルクから、「作曲の才能よりも発明
の才能がすばらしい」と、誉めたのかけなしたのか分らないことを
言われたらしいが、さもありなんと思える。ただし、このプリペア
ド・ピアノの特長を活かした作曲は大変難しい。ケージの発明の才、
恐るべし。
この倍音豊富な音の世界は、純正律的にも大いに共感できるもの
がある。NAXOSは安いし、ぜひ1回お聴き願いたい。
INFORMATION
●『MISSA HERACULES DUX FERRARIAE』
(Virgin / 7243 5 62346 2 8)
The Hilliard Ensemble
●『プリペアド・ピアノのためのソナタとインタリュード』
(NAXOS / 8.554345)
Boris Berman
#
■8■~~西潟昭子が弾きうたう玉木宏樹邦楽器作品の数々~~
『いちめんの菜の花』
CDリリース&発売記念コンサート開催のお知らせ
お待たせしました! このほど、邦楽界のトップランナー・三弦
奏者の西潟昭子さんのソロCD『いちめんの菜の花――玉木宏樹邦
楽器傑作集』が、満を持してリリースされました。サブタイトルに
もあるように、収録曲のすべてが玉木氏の作曲・編曲による意欲作
です。
内容は、従来の創作邦楽とは一線を画したものとなっています。
純正律やピタゴラス音律を意識しながらも、ひろく、どなたにも親
しんでいただける曲創りがなされていますので、「日頃、邦楽には
縁がなくて……」とおっしゃるみなさまにも、是非一度、聴いてみ
ていただきたい一枚です。
特筆すべきは、三絃のサワリをはじめ、邦楽器が本来持っていた
はずの倍音を含んだ豊かな音色が玉木純正律マジックによって甦り、
いきいきと輝いてる点。邦楽器たちが取り戻した真実の響きと息吹
の素晴らしい世界をぜひ、お聴きください。
* * * * *
つきましては、来る4月8日(木)abc会館ホールにて、この
CDの発売を記念した《「いちめんの菜の花」コンサート》を開催
いたします。西潟昭子氏はもちろん、CD収録に参加した豪華演奏
陣の出演による華やかなステージをお届けいたします。CDの鮮や
かな感動を、さらにライヴで体感してください。入場料4000円
のところを、純正律音楽研究会会員の皆様、および会員が同伴また
は御紹介下さった方々は割引価格3000円となりますので、お誘
い合わせでお越しください!
西潟昭子『いちめんの菜の花』
(ARCH-10320/定価3000円(税込〉)
「いちめんの菜の花」他全8曲収録。
演奏――西潟昭子(三味線)、玉木宏樹(ヴァイオリン)
福永千恵子(箏)、石垣清美(箏、十七絃、三味線)
三橋貴風(尺八)、山本普乃(三味線)、野澤徹也(三味線)
――玉木宏樹邦楽器作品展
「いちめんの菜の花コンサート」――
日時:2004年4月8日(木)19:00開演/18:30開場
会場:abc会館ホール
都営三田線「芝公園」下車
(東京都港区芝公園2-6-3/Tel. 03-3436-0430)
料金:全席自由/要御予約
一般:4000円
正会員・ネット会員:3000円
*会員が御同伴・御紹介される方々も3000円となります。
主催:特定非営利活動法人 純正律音楽研究会
◇お申し込み方法◇
御予約は純正律音楽研究会にて承ります。お電話にて御予約の際、
スタッフ不在の場合は留守番電話にて承りますので、
・会員様のお名前
・会員であること
・御希望のチケット枚数
を、メッセージとしてお残しください。
追って事務局より御連絡申し上げます。
◇CD、チケットのお申し込み先◇
特定非営利活動法人 純正律音楽研究会事務局
(Tel. 03-3407-3726/日祝休)
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■9■ →→→純正律かわらばん
●玉木純正律の世界への入門編CD登場
玉木宏樹『純正律への誘い』発売中!
�健康雑誌『壮快』への掲載をきっかけに、最近の事務局には、
「初めて聴いてみるのに、種類がありすぎて、どのCDを選んだら
よいかわからない」といったお問い合せが多く寄せられています。
そこでお薦めなのがこのCD。『光の国へ』をはじめとする玉木純
正律CD各種から8曲を選び、純正律と平均律の聞き分け用和音も
収録。税込1200円とお手頃価格です。
●根強い人気の名盤が装いも新たに。
『光の国へremake Vol.1~2』同時発売!
�玉木純正律のインディーズ第一弾として、発売以来御好評を頂
いてきた『光の国へ』の3枚組シリーズですが、このほどリメイク
され、2枚シリーズとなって装いも新たに生まれ変わりました。
「Vol.1 歓喜の翼」は全13曲収録、「Vol.2 旅の予感」は全12曲
収録で、定価はいずれも税込2100円。今でも通販の御注文が最
も多い、人気のシリーズですから、プレゼントにもおススメです。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
■10■ @@@@@西麻布通信@@@@@
◆3年半に及ぶフランス生活を終え、この度、帰って参
りました。久し振りの日本はTVの中の女の子と銀行の
名前がすっかりわからなくなっており、前者は元々詳し
くないのだけれど、後者は大変困るなぁと思っている今
日この頃です。以後よろしくお願いいたします。
〈黒木朋興〉
◆この度アルキ退社に伴い事務局も「卒業」させて頂く
事となりました。お陰様で、純正律の素人なりに色々勉
強させて頂く事ができました。今後の事務局は、黒木さ
んと頼もしい後任の方とで、よりパワフルに展開してい
く予定ですので御期待下さい! 関係者の皆様、5年近
く本当に有り難うございました。 〈田村圭子〉
〒〒〒〒〒〒おたよりお待ちしています!〒〒〒〒〒〒
〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2-1F
Fax. 03-3407-3726 / E-mail: archi@ma.rosenet.ne.jp
純正律音楽研究会 まで
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とりあえずいちばん速い純正律情報はこちら!
→玉木宏樹のホームページ
URL : http://www.midipal.co.jp/~archi/
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不許複製(c)純正律音楽研究会
