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ピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会会報
『ひびきジャーナル』 【創刊第8号】
2002年12月24日発行
編集/発行:ピュア・ミュージックサロン/純正律音楽研究会
〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2 (有)アルキ内
Tel. / Fax. 03-3407-3726
※(C)純正律音楽研究会 禁無断転載
転載等、二次的にご使用になる場合は、必ず事前に純正律音楽研究会
事務局まで御一報ください。
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<<今号の内容>>
■1■玉木宏樹の“この人と響きあう” 第8回
三絃奏者 西潟昭子さん
■2■ムッシュ黒木の純正律講座 第8時限目
「本質」を求めて…… 黒木朋興
■3■天国的純正律音楽入門 第8回
現代音楽は1976年に既に死んでいた[その1]
純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
■4■外科医のうたた寝☆その7 名古屋、大阪、食べ歩き
福田六花(純正律音楽研究会発起人:医学博士、作曲家)
■5■CLUB-PURE 今回のメンバーズ――正会員・さとう木誉さん
■6■CD REVIEW [[[[[[[[[純正茶寮]]]]]]]]]] 玉木宏樹
『Carmina Burana
――Medieval Pems amd Songs』(NAXOS/8.554837)ほか
■7■Reported by Members
西潟昭子リサイタル2002 正会員・八木澤享一
■8■純正律かわらばん
→新春の玉木純正律関連イベント情報いろいろ。
■9■西麻布通信
レアな純正律情報満載のピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究
会の公式ホームページ、仮営業中!〈http://www.pure-music.ne.jp〉
→掲示板始めました。バックナンバー等、アーカイヴもあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
#
■1■ 玉木宏樹の“この人と響きあう” 第8回――
「よい調弦こそが楽器を鳴らす」
三絃奏者 西潟昭子さん
#
→当研究会はこの秋から、邦楽界のトップランナーである三弦奏者の西潟昭子
さんにも御参画をいただき新たな展開を行っています。今回はその端緒を開い
た、夏に行われた対話の模様をお届けします。きっかけは、玉木氏の昔からの
知人であり、現代邦楽研究所を主宰され、三弦、箏、尺八等、邦楽の若手演奏
家育成にも尽力されている西潟さんから新曲の依頼が来た事からでした。和と
洋の異才が織り成すコラボレートはどのようになされるのでしょうか。
―― ―― ―― ―― ――
玉木:今回私は作曲の委嘱をいただきましたんで、どういう内容でどう委嘱さ
れるのかというお話から伺いたいと。
西潟:最初、来年3月初演の演奏会用をとお願いしたんですが、その作品を1
月4日に新潟県豊栄市の福島潟というところで……。
玉木:福島潟ねえ。新潟競馬には何回も行ってるし。
西潟:そうなんですか。1月4日にちょうど合うといいですね。
玉木:競馬はやってないや(笑)。
西潟:私の友人が「ビュー福島潟」っていう、野鳥の宝庫である福島潟の自然
を保護するためのセンターを造ったんです。そこで色々活動してて時々演奏会
をやるんですけど、この前玉木さんの「2つの舞」を演奏してたら司会者が泣
いちゃうくらい感激されて、お客さんも何人も目頭をおさえてて。演奏者がま
たよくて、若い女の子とニヒルな同志社の哲学科を出た若者に演奏させたんで
すよ。
玉木:ああいう曲はニヒルに演奏してくれると非常にいいですね。自分が酔っ
てるって感じでやられるよりも。
西潟:私、とてもいい演奏だと思ってね、そういうこともあって、福島潟の四
季をテーマに、日本の伝統楽器を使った曲がほしいと前々から言われてて。そ
れとは別に私は玉木さんに研究所(現代邦楽研究所)の卒業演奏(修了コンサ
ート)で初演をするための曲をお願いしていたんですが。
玉木:そうでしたね。
西潟:それ以前から玉木さんの本(『音の後進国日本』)を拝見していて思っ
たんですけど、私たちの調弦方法っていうのは、昔は箏なんかでも基音になる
音をとってからハーモニーで合わせていって、それがいかに速くできるかがプ
ロになる早道みたいにいわれてきたのに、今はみんなピッチメーターを使うん
ですよね。それも1本ずつピッチメーターで合わせるの。それがとにかく針が
ゼロのところに来るようにしか合わせない。半音も何もかも全部そうやって合
わせるんです。三味線の場合はポジションを押さえるので、まあ、優柔不断と
いえば優柔不断なんだけど、例えば本調子でも「シミシ」に合わせると、最初
の一の弦(低い弦)、それから4度5度の関係で合わせますよね。だけど平均
律よりはちょっとずつ高くしないと「サワリ」がつかないんです。「サワリ」
をつけないと三味線は、本調子も二上りも面白くないわけですから、「サワリ」
をいかにつけるかっていうことが、私たちが本番の前に苦労するところなんだ
けど。そういうふうにシビアに平均律に抵抗しつつね――もちろんピッチメー
ター使うんですけど。それから、上向下向でポジションなんかちょっとずつ違
うんですよ。
玉木:おっしゃってるのは、まさしくピタゴラス音律なんですよ。
西潟:そうですか。
玉木:箏の調弦方法での順八逆六、これは全世界に通じるピタゴラス音律なん
ですよ。ピアノの平均律に比べると、例えばドの♯があってレに行くときに、
平均律だとドの♯とレの♭は一緒なのね。僕もヴァイオリン奏きだからそうな
んだけど、レに対するドの♯っていうのは、無意識のうちにピアノのよりも高
くしないと気持ち悪いんですよ。それから、今度は逆にレからドに行くとき、
下に下がる時のレの♭、それからドに行くとき、これは三味線でもこうやって
押さえておいて――邦楽の場合に多いか少ないか僕はわからないけど、唄うと
きだってそうでしょ。
西潟:唄はまさにそうです。自然にそうなってる。
◆唄と三味線の微妙な関係◆
玉木:今度9月28日に芝abc会館でコンサートやるんですけど、実はとん
でもないことやるんですよ。チラシに「尾上菊咲慧:舞い」ってあるけど、こ
の人の舞いのために僕、常盤津と長唄をずっと聴いてるんですよ、純正律・ピ
タゴラスで。
西潟:本当?
玉木:おかしいでしょ。それでその元の曲をずっと聴いてるんだけど、半音の
取り方が見事に平均律と違う。特に唄がね。ものすごく半音が狭いというか。
西潟:そこがしびれる所なのよ。
玉木:それをどうやって表現できるのかなあという。純正律音楽研究会の親玉
としては、常盤津と長唄と、まあ三味線の弾き方もだいぶ唄とは違うけど似て
るところもあるから、それを処理できるし。今までそういうことを本気で音律
の面からやった人間はいないんだよね。それで今取り組んでるんですよ。実に
面白い。唄と三味線、あれはどっちが主なんだろうね? 三味線が引っ張って
いくことで音程をとっていってるんだろうか?
西潟:いえ、唄に三味線を合わせなきゃいけない。唄のほうが先行してるの。
玉木:なるほど。
西潟:だけど、曲をリードするのは三味線弾き。
玉木:だから「こう行くんだよ」って先走って弾いてるよね。
西潟:そうですね。全てを把握してるのは三味線弾きですから。
玉木:やっぱり。あれ面白いね。三味線が必ず遅れて、というかシンコペート
で入って来るんだよね。
西潟:一緒じゃ駄目なのよね。ずらさないといかん。一緒だと幼稚なの。
玉木:このずらし具合が五線紙に書くときに非常に苦労するんだ(笑)。大変
ですよ。マーラーのシンフォニーを譜面に書く方が簡単だ。なんでこんなもの
が譜面に書けないのかなと思うぐらい苦しむね。
西潟:だから譜面は大まかにしか書いてくれなくていいんですよね、唄なんか
は細かく書かれるとワケがわからなくなるから。
玉木:それはいいんですよ。でも、僕は原曲をただアレンジするんじゃなくて、
それをちゃんと理解した上でオリジナルを書くんだから。
西潟:よく一般に採譜なんかされる場合、「一緒でいいのに」って思うのよね、
どうせこっちでずらすんだからって。
玉木:本来はそうなんだよね。でもいつも音程が同じだと困るから、必ず5度
下がってみたり。
西潟:そうですね。一応決まりがいろいろあって。
◆弾くこと以前にまず調弦を!◆
西潟:それでも、音程的に三味線は自由になるところがだいぶあるんだけど、
箏は箏柱を立てて固定しちゃうじゃない、平均律のピッチメーターに合わせて。
それで平気で弾いてて、ちゃんとした調弦がだんだんできなくなってきてるん
ですよね。こういう事を私たちは教えなきゃいけないんだけども、結局、合奏
とか音楽を弾くことばっかりで先へ行こうとして、基本のところをなかなか時
間かけて教えてあげたりしなくなってるのね。やっぱりそういうところを見直
さないといけないなと思ってて。
玉木:そうだね。
西潟:玉木さんのご本を読ませていただいて、これはやっぱりそういうことも
含めて若い人にいろいろ勉強してもらいたいと思ったし、私自身もそういう勉
強を改めてしてみたいと思ったんですね。だから玉木さんに作品をお願いして、
御講義もしていただけたらと思ったんですけど。
玉木:有り難うございます。さて、打ち合わせに戻ると、どういう曲にしたら
いいのかな。何分ぐらいとかご希望は。
西潟:10分前後かな。お好きなように。
玉木:10分前後でよきにはからえ……と。「2つの舞」の箏のパートは難し
かった?
西潟:難しいそうですよ。いつも一緒に演奏している福永千恵子さんに「これ
いい曲だから弾いてよ」って言ったら「あれ、めんどくさいのよ」って言われる。
玉木:弾きやすい/弾きにくいの問題じゃなくて、なんでめんどくさいかって
わかるの、言ってることは。いろいろやってるのに、聴衆にはそれが見えない
からだよね。
西潟:わからないのよね、心地よいことは心地よいのよ、きっと。だけど、う
んと上手く弾かないと心地よくならないのよ。
玉木:僕がヴァイオリンの曲を書く時は、すごい簡単なのに聴いてる人にはも
のすごく難しく聞こえるっていうのが得意なのね。
西潟:三味線はそういうふうに書いてくださいね。そういうの大好き(笑)。
◆五線譜は邦楽にも有効◆
西潟:だいたい三味線ていつも、難しいのに映えない曲が多いんですよ。箏の
場合は指使いをうまくあみ出さないとフレージングがうまくいかないんですよね。
玉木:そういう訓練については、僕はある程度ヒントを与えることできるんだ
よ。というのは、そのための訓練方法を僕は知ってるわけ。それは他のクラシ
ック系の楽器全部そうなのね。その点は箏なら箏、三味線なら三味線で古典を
やってる人ならよくわかると思うんだ。例えば裏の拍を強くする。箏って裏を
強くするってあんまりないんだよね。それが上品なんだけど。そういうことで
は講習やってみてもいいですよ。
西潟:そういう、箏のエチュードになる曲がいいですね。そうすると普段の訓
練にも教材として使えるから。
玉木:だから例えば、「レソラド、レソラド」「レラソド、レラソド」「レソ
ドラ、レソドラ」とか入り交じったりするとすごいイヤなわけでしょ、でもそ
んなことはできなきゃおかしい。それができたときにすごい気持ちよくて「や
っぱりこういうふうにやったらいい曲になるんだなあ」というインパクトを与
えれば、そういうフレーズも練習してみようかなってなるわけだよね。
西潟:やりがいのある練習になるわけね。
玉木:モチベーションがなかなかね。先日、福山で箏の曲やったときも、八分
音符で3つずつアクセントつけていくっていう事だって、箏の人はできないん
だよ。
西潟:それは普通の人はできない。訓練しないと。リズム感が無いんだから。
「悪い」んじゃなくて「無い」の。リズムは訓練しないとね。
玉木:でもカラオケとかでそういうフレーズがあったら平気で歌うじゃない。
それが箏の時に全然一致しないのね。
西潟:だって、楽器を楽器だと思ってないんだもん、道具だと思ってる。それ
を「唄ってみて、その通り弾けばいいんだから」って言ってやっと。しょっち
ゅうそう言ってないと自分で気がつかないね。アタマでは確かにちゃんと描い
てるはずなんだけど。
玉木:そうだよね。
西潟:それからね、いつも糸譜を見てるでしょ、古典の楽譜を。あれは全然視
覚的に音楽が伝わってこないんですよ。やっぱり五線譜だとある程度音楽の景
色が見えますよね。そういうこともあるからアタマで音楽が描けないのね。
玉木:今、西潟さんのところでは五線譜で? それは非常にいいことだね。
西潟:そう。でも音楽学者にものすごくブーブー言われましたよ、必要ないっ
て。私たちには必要性があるし、それが優れてると思うから五線譜でやらなき
ゃって言ってるのに、「日本の音楽は五線譜には表せないはずだ」とか言っち
ゃって。そんなの糸譜にだって表せないよって(笑)いつも言うんだけど、で
もめげずに。
玉木:五線譜って完全なもんじゃないし、ドとレの間に書けない音もいっぱい
あるけど、それだけのことなんだよ。でもとりあえず目安としては非常にわか
りやすいからね。それを材料にして「表現方法はこうだ、五線譜は絶対じゃな
いよ」って言うならわかるけど、五線譜を否定して昔のだけでやられたって困
るよね。僕、義太夫の研究したときに、義太夫の譜面、あれ読めなかったんだ。
横に書いてあることとかが。あんなものでよく譜面になるなあと思ってさ。
◆津軽三味線弾き・玉木宏樹?◆
玉木:そういえば僕、昔インチキ三味線やってたじゃない、あなたからも怒ら
れてさ。
西潟:いえいえ怒りませんよ(笑)。
玉木:豊文さんて覚えてる? ある時、豊文さんとこに呼ばれて、「玉ちゃん、
あんたね、イイカゲンな三味線弾いてるから、私が教えるから」「教えなくて
いいよ」「いや、ちゃんと教えないとあんたヘンなことやるからね、うちへ来
なさい。私はちゃんと教えるから。その代わり条件がある。私にね、コードネ
ーム教えなさい」ってね(笑)。それで青山の豊文さんのとこいったら汚いの
なんの。猫が何匹もいて、どうぞって言われてもそこにゴキブリの死骸があっ
たりして座れない。行ったら最初「Cのコードってのはどう押えればいいの」
って始まって。いくらCって言ったって、まず本調子からいって使える音があ
るかどうか、それからの話で、いきなり言われても困る。「シミシならシミシ
にしてください」って言って、それでCとはああだこうだって始まったわけ。
「何度言ったらわかるんだよ、こうだって。三味線はこうだから、そんな風に
押えたらできない」とか言って「ああそう、勉強しなきゃ。これでいいの?」
とかって。30分ぐらい経ったら「じゃ、今度はあなたの番」。そしたら、僕
が三味線を持った途端に「違う! 何、その構え方は!」って、もういきなり
(笑)。「バチの持ち方が違う!」とかね。
西潟:その話、授業でしてください。すごくいい(笑)。
玉木:おかしかったね、あれは。どうしても僕たちは横にして、ギターみたい
抱え込んじゃうけど、津軽三味線っていうのは結構「横」なんだよね。
西潟:津軽は抱え込むのね。
玉木:あの抱える格好からして「この人は津軽」ってすぐ分るね。
西潟:でもあれだけの力を入れて弾くには、こう抱えないと力が出ないのよ。
玉木:それで3回か4回レッスンしたのかな。その後は飲んだくれて悪いこと
ばかりやっててさ、三味線なんか安物だからさ、破いちゃって捨てちゃったの
よ。僕、ジャズの時に胴体にエレキマイク付けてエレキ三味線にしてたのね、
そんなのももう、全部捨てちゃってさ。そしたらある日の12時頃かな、二日
酔いでうなってるとこに東京室内楽の人集めの人から電話かかってきて、どう
してもすぐ東芝レコードに来てくれっていうから何だろう、何やらせるんだろ
うと思っても「いいからすぐ来て」って。
西潟:わかんなかったんだ(笑)。
玉木:「玉木さん昔、三味線やってたわよね」「ウソだよあれは」「三味線持
ってるわよね」「今、そんなもんねえよ、破って捨てちゃったよ」「ともかく、
玉木さんなら津軽三味線できるでしょ」。できねえって(笑)。そしたら「ちょ
と待って、電話代わるから」って言って出てきちゃったんだよ、豊文さんが。
「玉ちゃん、待ってるよ、すぐ来てよ」「師匠がそこにいるのに何なのよ」
「まあ、とにかく来ればわかるのよ」「おれは三味線持ってないよ」「いいの
よ、私の稽古三味線貸すから」。何なんだよ、なんで豊文さんがいるとこに僕
が行かなきゃなんないんだよって。で行ったら、スタジオに30人ぐらいいて、
みんな待ち構えててさ。僕が入っていくなり一斉にスタンディング・オベーシ
ョンするわけ。豊文さんも、「ね、これね」って小唄の稽古三味線貸すわけ。
れで譜面見たらね、「津軽じょんがらアドリブ」ってコードネーム書いてあるの!
西潟:そりゃ困ったわねえ(笑)。
玉木:誰もできないよ、そんなの。僕だってやったことないんだから。コード
ネームでどうやったらいいかってことは、ヴァイオリンとか他の楽器だったら
ある程度わかるけど。みんなにスタンディング・オベーションで迎えられた以
上どうしたもんかなあと思ってさ。そこで一生懸命、1回もやったことない津
軽三味線の雰囲気思い出してさ、ンチャンチャンチャンチャンチャラランラン
って「こんなのでいいの」ってやってたら、指揮者から何から一斉に「それ、
それ!」って言うし、そしたらそれが一発OKで(笑)。
西潟:やだ、いい加減! 怒るよ、それは(笑)。
玉木:いい加減もいいとこ(笑)。でも本当におかしかったよね。 (了)
――――――――
――こんな調子でお二人の対話はおおいに盛り上がり、尽きることなく続くの
でした。西潟昭子さんが主宰される現代邦楽研究所に関心をお持ちの方は、公
式ホームページ http://www.genhouken.com を、是非、お訪ねください。
【文/田村圭子】
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■2■ ムッシュ黒木の純正律講座 第8時限目
「本質」を求めて…… 黒木朋興
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ミーメーシスとは何か、という話をします。一見音楽に関係ないかのように
思われるかも知れませんが、近代以前の西洋芸術のあり方を理解するためには、
是非とも知っておかなければならないことと考えるからです。端的に言えば、
ミーメーシスとはギリシア語で「模倣」という意味です。と、こう日本語で訳
語を当てると、本物に対して紛い物みたいな感じがして、否定的な印象を拭い
去ることが出来ませんが、ミーメーシスとは単なるコピー=複写ではなく、
「本質的なるものの再現」と言った方が良いでしょう。更に、芸術がミーメー
シスの原理に基づくという時、芸術創作とは「より真なるものをこの世に出現
させるための営為」ということなります。
この概念はプラトンやアリストテレスの哲学の中でも重要な位置を占めます
し、また西洋人が西洋の伝統という時、古代ギリシアまで溯って考えることが
普通なのですが、ここでは古代ギリシア・ローマ文明と現在の西洋文明の間に
は断絶があるという立場から、あくまでもキリスト教文明を中心に据えて話を
進めることにします。もちろんキリスト教に対するギリシア哲学の影響を認め
ないというわけではありません。
◆「あの世」とは理想の世界◆
キリスト教思想というのは、基本的に「あの世」と「この世」という厳密な
二項対立を想定している、と言っても過言ではないでしょう。当然、「この世」
とは我々人間が住んでいるこの世界のことであり、「あの世」とは神の統べる
世界のことです。気を付けて欲しいのは、日本語で「あの世」と言えば魑魅魍
魎の跋扈する何だか妖しげな世界のことを思い浮かべる人も多いことかとは思
いますが、キリスト教にとっての「あの世」とは物事が理想的なまでに理路整
然としてある「本質」の世界です。キリスト教の神とは、ロゴス=理性・言葉
の神であることを思い出しておきましょう。そして芸術の役割とは、「あの世」
の理想的な美を「この世」の人々に提示することなのです。あるいはそのよう
な美を「この世」において「再現」しようと務めることに芸術の価値があると
いうことでもあります。
◆じゃ、「be」ってなに……?◆
でも一体この「本質」とはなんでしょう? ここではbe動詞のことを考え
てみましょう。そもそもbeとはどういう意味でしょうか? まず最初に挙げ
られるのが「いる・ある」という意味です。例えばThere is a pen.(ペンがあ
ります。)という例文が考えられます。つまりexistenceの意味であり、この
語は「存在」とか時には「実存」とか訳されます。それに対して、This is a
pen.のbeはどういう意味でしょう? 多くの人が「です」と答えるのではない
でしょうか? 学校でそう教わるのですから仕方がないのですが、かなり不適
切な訳であると思っています。では何かと言えば、このbeはイコールなので
す。ですからこの文は「これ=ペン」ということになり、これを普段我々が使
っている日本語で言うと「これはペンです。」あるいは「これはペン。」とい
う意味になるというわけです。さて、このbeはラテン語で何に当たるかとい
うと、esseになります。そしてこのの名詞形がessenceであり、つまり「本質」
です。この「本質」目指してイコールで結んでいく論理の体系のことを神学と
いい、また暗喩という文彩はイコール関係に基づくレトリックだと言えましょう。
◆だから、ミーメーシス◆
「この世」は不完全です。ですが、というかだからこそ、学問なり芸術は、た
とえ手にしているのが不完全な材料ばかりだとしても、それをどうにかしてで
も組み合わせて「本質」の世界へと迫らなければなりません。つまり「この世」
と「あの世」の間のイコール関係、あるいは照応関係を探る営みこそがミーメ
ーシスであると言えましょう。
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■3■ 天国的純正律音楽入門 第8回
現代音楽は1976年に既に死んでいた[その1]
純正律音楽研究会代表 作曲家・ヴァイオリニスト 玉木宏樹
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ここに1枚のCDがある。アルヴォ・ペルトの「アリーナ」(ECM New
Series1591, POCC1062/日本発売元:ユニヴァーサル・ミュージック)だ。
今日はこの話である。
いわゆる現代音楽といっても、広義には、すべての現在の音楽シーンのこと
だともいえるが、ここでは狭義の「現代音楽」を話題にする。で、狭義の「現
代音楽」とは何か? それは、クラシック系作曲家の現代作品のことを指し、
それも親しみ易いメロディやハーモニーを基にした分り易い曲ではなく、難解
を旨とする(何回聴いても分らない)不協和音の連続で、大概の聴衆には苦痛
を強いるだけのやっかいな曲が多い。
◎誰が音楽をダメにしたのか◎
時代は大体、1910年頃から、シェーンベルクが無調音楽(調性のない音
楽)を始め、ストラヴィンスキーは「春の祭典」で激しいバーバリズムをバレ
エに持ち込んだ。これ以後、クラシック系の音楽は一挙に様変わりし、シェー
ンベルクが12音音楽の手法を確立するに至っては、時代は一挙にメロディと
ハーモニーを放棄した騒音的な音楽が主流となっていった。
そして、1930年代になると、後期ロマン派の生き残りの作曲家も姿を消
し、ドテン・バタン・グショーンの無調音楽が全盛となる。当時の風潮として
は、分り易い曲を書くと完全にバカにされ、そういう指向の人は、ジャズ系に
走ったようだ。
なぜ音楽がそういう風になってしまったのか。一つには、作曲至上主義がは
びこり、演奏家より優位に立とうとする作曲家の傲慢が、演奏不能、理解不能
の風土を育てた。そしてもう一つは、純正律と平均律の問題が横たわっている。
ピアノ用に簡便な(1回の調律で済む)平均律の調律を施したピアノが工場
出荷したのが1842年といわれ、それでも最初のうちは、プロからは全く無
視されていた。オクターヴ12鍵のピアノに対し、前期ロマン派の作曲家たち
は、ヴェルクマイスター、キルンベルガー等の不等分調律を駆使して作曲して
いたが、1890年頃から、プロの作曲家、ピアニストたちも殆ど平均律に屈
するようになる。独学で作曲の研鑽をしていたシェーンベルクは、アマチュア
のチェロ奏きだった。つまり、音程を自分でコントロールしなければいけない
立場である。ピアノやオルガン等は調律師がピッチをコントロールし、演奏者
はピッチに対し、無関心で、無神経である。
◎シェーンベルクは調性を愛した◎
平均律の跋扈は、ハモる美しさをないがしろにする。ハモらない調律で調性
音楽(これは純正のドミソを基礎にしている)をやる矛盾を、チェロ奏きだっ
たシェーンベルクは猛烈に自覚し、オクターヴを単純に12分割するだけなら、
各音に差別のない、つまり調性にとらわれない方法論を考案した。私は、シェ
ーンベルクほど調性を愛した人はいなかったんじゃないかとさえ思う。彼の和
声法の本は、驚くべき内容だし、初期の「浄夜」なんて、調性音楽のひとつの
頂点だとさえ、いえる。その彼が12音技法を編み出したのは、平均律に対す
るアンチテーゼではなかったのか。平均律の特長は、後期ロマン派の爛熟した
転調多用に対応できる唯一の調律法と認識されたからであり、その転調多用の
調律を逆手にとり、ハモることを徹底的に拒否するんだったら、という開き直
りで編み出した方法論が、12音(ドデカフォニー)音楽だったのではないだ
ろうか?
このメロディもハーモニーもない無機的な作曲法は聴衆に苦痛を与え、作曲
家は孤立していったが、メロディもハーモニーも必要ない作曲法は、才能のな
い人にも「作曲」といえるまがいものを大量生産させることになってしまった。
実は私も学生時代、無調音楽で作曲していたこともあったが、なぜやめたか、
いつから純正律に向かい始めたか等は、次号で詳しく述べよう。また、197
6年というのは何かというと、アルヴォ・ペルトがピアノソロの「アリーナの
為に」を初演した年である。ぜひ、その曲を聴いてみて頂きたい。
〈次号[その2]に続く〉
【『ひびきジャーナル第8号』ネット版bに続く】
【『ひびきジャーナル第8号』ネット版aから続く】
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■4■ 外科医のうたた寝☆その7 名古屋、大阪、食べ歩き
福田六花(純正律音楽研究会発起人:医学博士、作曲家)
11月は立て続けに名古屋と大阪に行って来た。どこかにいけば必ずその土
地の食べ物を食べないと気が済まない性分なので、旅は楽しくもいそがしい……。
★やっぱ味噌カツでしょう!★
まずは名古屋。これは名古屋の今池にある〈パラダイスカフェ〉と云うライ
ブハウスで演奏の仕事である。バンドマン3人でクルマに楽器を積んで名古屋
に向かい、現地のミュージシャンと合流してリハーサルである。2時間ほど空
き時間があったので〈味噌カツ〉が食べたかったのだが、主催者が連れていっ
てくれたのは普通のファミリーレストランであった。無念さを抱えつつ深夜ま
でリハーサルを行いその夜は主催者の家に泊めてもらった。
翌日は夕方からの演奏なので比較的時間に余裕があり、燦々と太陽が差し込
むトンカツ屋さんで味噌カツを食べた。東京ではトンカツは通常ソースで食べ
るのだが、名古屋のトンカツは甘辛の味噌をかけて食べる。最初はびっくりし
たがなんとも美味しくてはまっている。無事に演奏を終えて打ち上げは鶏料理
の店である。名古屋といえば名古屋コーチンで、焼き鳥、手羽先、チキンサラ
ダ、唐揚げ、鶏雑炊とひたすら鶏肉ばかり食べまくり、コケコッコー状態で深
夜の高速をとばして東京に帰ってきた(ちなみにトーストの上にたっぷりあん
こを乗せた、小倉トーストと云う恐ろしげだが結構美味しい名古屋独特の食べ
物もあるが、今回は食べられず残念でした)。
★選んだワケは「食い倒れの町」だから★
2日後、新幹線に乗って大阪へ行く。諸般の事情で11月から介護老人保健
施設の施設長になった関係で、大阪で開催される老健管理者講習会に勉強をし
に行った。同じ時期に東京でも同様の講習会が行われていたのであるが、食い
倒れの町大阪に行きたくてつい大阪の方の講習会を申し込んでしまった。
2日間ホテルに缶詰になって、コーヒーをすすりながら講義を聴いて夜は大
阪の町に繰り出す。僕が好きなのは〈じゃんじゃん横丁〉の串揚げ屋さんであ
る。地下鉄御堂筋線に乗り動物園前駅でおりて通天閣のすぐそば、目指す〈じ
ゃんじゃん横丁〉とはわずか100mあまりのアーケードの両側に無数の寿司
屋、串揚げ屋、そして碁会所、雀荘などがひしめいている不思議な空間である。
ガラス越しに眺める大阪のおっちゃん達が囲碁、将棋などに興じる姿は、とて
も2002年の日本とは思えない風景である。
大阪に行くたびに訪れる串揚げ屋さんは、カウンター8席のみの小さな店で
ある。生ビールを飲みながら、豚肉、牡蠣、玉葱、椎茸、イワシ、紅生姜、う
ずら卵、三度豆、ウインナー、海老等どんどん揚げてもらう。特製ソースは隣
の人と共用で〈2度づけ厳禁〉である。
「おう、この藪医者また来たか。年に2回しか来ないんだからどんどん食べて
け!」と怒鳴られながら食べる串揚げの美味いこと、美味いこと。牡蠣と海老
の他はどれも1本90円であり、この店で2000円以上使うことは難しい。
最終日、黒門市場に寄って鯨カツを買い食いして、驚くほど安い河豚を買っ
て新幹線に乗って東京に帰る。深夜、自宅で河豚を食べ尽くして今回の大阪は
完結した。
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■5■ CLUB-PURE 今回のメンバーズ――正会員・さとう木誉さん
会員の皆様に登場していただくコーナーです。
自薦他薦、どうぞ手を挙げてください。こんな面白い人いますと。
⇒今回は、正会員の方からの御寄稿です。去る9月28日に芝abc会館ホー
ルで開催された純正律拡大コンサート「玉木宏樹ジャストチューニングの世界
Part3――アポロンのたわむれ」にお越しくださったさとう木誉さんが、
コンサートについての文章をお寄せくださいました。
港区芝公園のあるabcホールでの純正律コンサート。大きなホールで聴く
のは、じつは初めて。会場は、お子さま連れの家族から、音楽専攻の学生さん、
カジュアルな装いのミドルなご夫婦など客層いろいろ。このあたりが玉木先生
の人柄を反映しているのかも……。というのも玉木先生のコンサートは、いつ
もバラエティに富んでいて、あんまり音楽(クラシック)のこと知らなくても
十分楽しめる(知ってる方はもっと楽しんでると思う)。珍しい楽器や演奏法
の好きな私は、終演後はたいてい 「あー、面白かった」という感想とともに
会場を後にすることになります。
今回も、縦笛によるオーケストラ演奏あり、純正律音楽による日本舞踊あり
と、ちょっといい体験がてんこ盛りでした。いちばん印象に残ったのは、「ア
ベマリア」を披露してくれたカウンタ山田さんの美しいカウンターテナーの歌
声。ゲスト出演ということで一曲だけだったんですけど。近々、本格的なデビ
ューを予定しているらしいので、これからが楽しみです。
◆ ◆ ◆
さて、純正律に出会ったおかげで、ハーモニーのことがずっとずっとわかり
やすくなったって思います。それまではけっこうみんな「キレイにハモるため
には、みんながそれぞれ決められたパートの音を、ぜったいはずしちゃダメだ
ぞ」って考えてたのでは? でも、それってなんか自分のところだけ間違って
なければいいや的な「機械化+完全分業化のすすんだハモリ工場」みたいな感
じしませんか? だいたい音楽に「正解、間違い」なんて考えが入ってくるの
もどうかなって思います。それじゃ音「楽」じゃなくて音「学」という感じです。
◆ ◆ ◆
ところで純正律は「自分の発する音(声)は、ちゃんとみんなと調和してる
かな?」というものですよね。自分たちの役割をちゃんと果たすだけじゃなく
って、みんなとの調和(ハーモニー)を重視する。仲間たちに気をつかって誰
かがちょっとくらいバランス崩しても、まわりのみんなでカバーするというか、
微調整できるような余裕も必要なんじゃないかなぁ。そういえば、ビギナーの
バイオリン奏者は指先に神経が集中するのだけれど、超ベテランなバイオリン
奏者の神経は「耳」に神経が集中するという話を聞いたことがあります。刻々
と変わる周囲の状況にちゃんと配慮して、自分の役割を果たす。こうゆうのが
純正律的センスなんだなぁって。ちょっとばかし音楽のことからはずれちゃっ
た気がしないでもないけど、一人一人の正確さもさることながら、調和(ハー
モニー)を重視するっていうのが、私にとって純正律のいちばん素晴らしい点
だと思ってます、ハイ。
/////さとう木誉(さとうきよし)/////
フリーライター&エディター。音楽をはじめ、イベント広報のプランニング
やインテリア、食品等の分野で活躍中。
CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW CD REVIEW
■6■ 純正茶寮 玉木宏樹
『Carmina Burana
――Medieval Poems and Songs』(NAXOS/8.554837)ほか
今回は、リーズナブルなのに中世パワー炸裂!(笑→CD帯のコピーより)な
逸品を一挙に2枚御紹介。担当は玉木氏です。
***************
アルヴォ・ペルトのCDについては別の項で紹介しているので、レビューで
は、図の2枚を紹介したい。まず『カルミナ・ブラーナ』。
ナクゾス・レーヴェルは、約900円前後という恐ろしい価格で新譜を出し
ている。ユーザー側に立った場合、たいへん嬉しいことだが、作・編曲家側か
ら見れば、ちょっとなあ……という面もあるが、よくこの値段で新譜が出せる
と、まず慨嘆。
☆ ☆ ☆
「カルミナ・ブラーナ」というと、カール・オルフを連想される方もおられる
と思うが、もともとは13世紀頃のドイツ系吟遊詩人たちの歌の総称で、オル
フはこの古楽を発掘し、現代風に編曲したものである。歌は、僧侶たちが酒・
女・道徳を説いた歌とされているが、坊主が酒・女を歌うなどとは何事ぞ、と
思うなかれ、「ボッカチオ」に描きつくされている様に、洋の東西を問わず、
生臭坊主は沢山いた。また「カルミナ・ブラーナ」はある面、とんでもなく卑
猥で直訳できないとも言われている。このCDは、そんな底抜けに陽気な乱痴
気騒ぎのCDだ。
☆ ☆ ☆
13世紀の曲でもあり、ドイツ系の音楽なのに、今日のようなドレミ節は存
在せず、すべて教会旋法、いわゆるモードだらけである。各曲はすべて転調な
しのハモりっぱなし。全くの転調も無く、コード変化もほとんどない曲の特長
は、いろんなモードの変換にあるということがよく分る。
言葉では〈教会旋法〉を知っていても、なかなか実態は分らない方にはぜひ
おすすめである。ヘクサコルドっぽい6音だけの曲もあり、ドリア、リディア、
ミクソリディアのメロディが多い。そして、教会旋法といいながら、暗いもの
はひとつもなく、1曲目の「ようこそ、バッカス」からして、底抜けのドンチ
ャン騒ぎで、けっこう笑えてしまう。
2曲目のリコーダーは、もろ尺八風だったり、他の曲でも旋法の使い方が妙
に日本風にきこえる時もある。最後のバグパイプがチャルメラ風だったりして。
アンサンブル・ユニコーンの演奏もすばらしいハモりの世界を楽しんでいる。
ハーディガーディ(一種の自動演奏ヴァイオリン)やフィドル、バグパイプ、
太鼓、カウンター・テナー、ソプラノ、何とも不思議なアンサンブルである。
☆ ☆ ☆
もう1枚の『中世・ルネサンス音楽への招待状』は、ベルギーの古楽グルー
プ、ウェルガス・アンサンブルのコンピレーションものだが、タイトル通り
「招待」にはうってつけ。1曲目は、5度並行オルガヌムで、後に和声法で禁
則となった並行5度がとても美しい。また9曲目は、うたと器楽の見事な純正
律のハモりが素晴らしい。
☆ ☆ ☆
2枚ともに古楽とはいえ、古臭くはなく、屈託がなくて面白く、特に私なん
か、手垢のつきまくったドレミ節には飽き飽きしているので、純正律的作曲に
対して大いに刺激を受けている。
INFORMATION
●カルミナ・ブラーナ Carmina Burana
――Medieval Poems and Songs―― (NAXOS/8.554837)
Ensemble Unicorn, Ensemble Oni Wytars
→「Bache, bene venies」他全13曲。
******************
●中世・ルネッサンス音楽への招待状
IN MUSICA VIVARTE(SRCR 9343)
Huelgas Ensemble
→「輝かしき血統より生まれし〈ラス・ウエルガスの写本より〉」他、
全11曲。
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■7■ Reported by Members
~玉木宏樹渾身の純正律邦楽新作も披露~
西潟昭子リサイタル2002
純正律音楽研究会正会員・八木澤享一
11月25日、池袋の東京芸術劇場大ホールまで出かけ、コンサート『三絃
の響き/西潟昭子の世界――リサイタル2002』を鑑賞させて頂きました。
コンサートは午後7時開演、途中休憩を挟んで午後9時に終了。大体1曲あ
たり15分間のペースだったようです。この日使われた主な楽器は三絃・筝・
十七絃。池辺晋一郎氏の作品ではフルートが加わりました。三絃の音も良いが、
特に十七絃が良い音を出しているのが印象的でした。このほか西潟さんの唄や、
Yuki森本氏の作品では「るふらん」による美しい女声合唱も聴けました。
私は現代邦楽の事はよく判りませんが、この日聴いた作品の多くは、普段聴
きなれている「調性音楽」とは大分異なっており、どちらかというと「無調」
のイメージに近いように思えます。しかし調和のよくとれた音の響きはとても
綺麗でした。
コンサートの内容は以下の通り。
- 絲曲(いとうた)〈作曲:鳥養 潮〉
三絃・筝・十七絃がズラリと並んで音をつぐむ様は壮観。クロマティックな
音の進行がこの曲には多用されているように感じました。作曲者の鳥養氏によ
ると、東南アジアの謡や日本の歌の旋律型を意識したそうです。 - 相聞歌〈作曲:浦田健次郎〉
西潟さんの三絃による弾き語り。邦楽の声には、洋楽のそれとは違う独特の
艶があります。 - DISTRACTION �〈作曲:松尾祐孝〉
西潟さんの三絃と石垣清美さんの十七絃のデュオ。西潟さんの表現をお借り
すると「超、難しい作品」とのこと。 - 裸の休日〈作曲:三枝成彰〉
山本普乃さんの三絃と西潟さんの唄。林あまり氏の短歌集から選んだという
詞は、ストレートな性描写に満ちています。やや場違いな印象は受けましたが、
もし歌詞がチンプンカンプンな外国語であれば、どんな内容でも気にならない
でしょう。 - たどるかたち�〈作曲:池辺晋一郎〉
西潟さんの三絃と、福永千恵子さんの筝、小泉浩さんのフルートによるアン
サンブル。尺八の代わりに使うフルートの調べは美しく、邦楽器と組み合わせ
ても全く違和感を与えません。 - Where being and being seen coincideノ〈作曲:Yuki森本〉
栗山文昭氏の指揮の下、西潟さんの三絃と「るふらん」の女声合唱を重ねる
という試み。女声合唱はとても美しいが、讃美歌のような調性感はありません。
喩えて言うなら、讃美歌が「クリスタル」、こちらが「アモルファス」といっ
たところでしょうか。ただ、三絃が奏でる日本の伝統的な旋律との重ね合わせ
は、ややミスマッチという気もしました。
《アンコール》
ジャワリ〈作曲:玉木宏樹〉
西潟さんに若手3人を加えた三絃の合奏。音の共鳴現象を利用する「サワリ」
の独特の響きを活かした邦楽らしい楽曲。邦楽と純正律の融合という新しい境
地を玉木さんは今後開拓するのでしょうか。
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■8■ →→→純正律かわらばん
● 玉木宏樹2003新春イベント速報
�新春の玉木宏樹イベント速報です。2002年夏から邦楽方面の作品にも力
を入れてきている玉木純正律ワールドが、ますますパワーアップして息をもつ
かせぬ展開になっています。詳細は別途メールにて御案内いたしますので、
ぜひ御参加ください!
○1月4日(土)
新春邦楽コンサートin福島潟
「福島潟幻想曲」@水の駅「ビュー福島潟」(新潟県豊栄市福島潟)
→玉木宏樹の新曲「福島潟幻想曲」(委嘱作品)を初演、もちろん玉木氏も
出演。別途御案内いたします。
○1月12日(土)
新春のお茶室で「純正律ヴァイオリンお茶会」@桜花亭
オリンピック記念青少年総合センター内(小田急線「参宮橋」駅下車)
→正会員・宮本ルミ子さんの企画によるミニコンサート。
○1月25日(土)
ピュア・ミュージック・サロン「土曜のお茶会」
――新年会バージョン!@ティールーム「FRIENDS」(港区西麻布)
→おなじみ玉木宏樹とゲストによる演奏と楽しいおしゃべりで過ごすお茶会
を新年会仕様で。
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以上の各コンサート情報の詳細は、別途メールにて御案内いたしますが、
純正律音楽研究会のホームページでも御確認いただけます。
〈http://www.pure-music.ne.jp〉
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■9■ @@@@@西麻布通信@@@@@
11月25日の西潟さんのリサイタルは大盛況でした。邦楽にはな
んとなく年配のファンが多いようなイメージがあったのですが、会
場には10~20代とおぼしき若者たちも多数いて認識を改めさせ
られました。玉木氏渾身の新曲「ジャワリ」の演奏は圧巻でした。
私の居た2階席は特に若い世代のお客さんが多かったのですが、
「ジャワリ」の演奏が始まった途端、まるでロックのライブみたい
なノリノリ状態になって楽しんでいた様子が印象的でした。12月
の新曲定期便にはこの「ジャワリ」の1と2を収録してデリバリー
中。必聴です! 〈田〉
〒〒〒〒〒〒おたよりお待ちしています!〒〒〒〒〒〒
〒106-0031 東京都港区西麻布2-9-2(有)アルキ内
Fax. 03-3407-3726 / E-mail: archi@ma.rosenet.ne.jp
純正律音楽研究会 まで
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とりあえずいちばん速い純正律情報はこちら!
→玉木宏樹のホームページ
URL : http://www.midipal.co.jp/~archi/index.html
*ピュア・ミュージック・サロン/純正律音楽研究会の
オフィシャル・ホームページにもお越しください!!
http://www.pure-music.ne.jp
掲示板も始まりました。各種純正律情報だけでなく、会報バックナンバー等、
アーカイヴも一部公開中。ぜひ、お立ち寄り下さい。
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不許複製(c)純正律音楽研究会
